廿参 ページ24
いただきますと丁寧に手のひらを合わせ、2人は机をかこむ。
一口料理に手をつけた杏寿郎。
その様子をAは恐る恐ると言った感じで伺った。
『…どう?』
「うまい!」
うまい!うまい!とかきこみだす杏寿郎。
ほっとしたように息をついたAも、気を改めて自らの料理を口に運んだ。
『……あ、うまい』
「うまい!うまい!うまい!うまいぞ!」
『やっぱ俺天才かもしれへん』
「『うまい!うまい!うまい!』」
語彙力の低下が著しい2人だが、同じ机を囲み、同じものを食べるというのは実に身近で気付きにくい幸せだ。特に、Aにとってはそうだった。
幸せやなぁ…
そう思いながらAは杏寿郎を見つめる。
その碧い瞳には、煉獄杏寿郎が身に纏う燃えるような赤色がこれでもかという程に映っている。
さすがは炎柱。彼の色はずっと赤色のままだ。
だが、この時Aの瞳が映したのはその赤色だけでは無かった。
「うまい!うまい!」
『…きょーちゃん』
「む、どうした!」
『……任務、気ぃ付けてな』
「あぁ!」
箸を休めることを知らない杏寿郎。
その後ろには、Aのどうすることも出来ない【色】が潜んでいた。
まだ小さい…やけど、御館様よりもはっきり色が出とる…
『………きょーちゃん、』
「む?」
『……フハッ、どんだけ詰め込んでんねん。喉つかえるで』
「よもや、うますぎて箸が止まらんのだ!」
『作った甲斐あるわぁ。ホンマ、ええ食べっぷり』
Aには見えるだけなのだ。
そして彼はその色が蝕むものを救うことは出来ない。してはいけない。
人の運命は、狂わせていいものではないのだ。
それがどんなに大切なものだったとしても。
彼はそれを昔の経験から嫌という程に理解していた。
だがそれを強く感じる度に、Aは己を殺したいほど、憎らしく感じていたのだ。
食事をしている時に積もる話は幾らでもあった。
2人でその晩は語り尽くして、酒を飲んで眠ったのだった。
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大正コソコソ噂話
「ごく稀にAの訛りがうつってしまう柱もいるのだ!」
『うつしてる自覚ないんやけどな。
最近めっちゃ笑ったんは、さねみんが【アカン!】って言うた時』
「本人も自覚がなかったものでそれはおもしろかった!」
『まぁ、そのあと殺されそうになったのは言うまでもないけど』
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隆弘 - 誕生日一緒だァァァァァ⁉︎今日から読み始めるので楽しみって感じです‼︎ (2022年7月25日 0時) (レス) @page1 id: 4c1fa166fb (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - 拙い説明で申し訳ありません……!ですが、ありがとうございます! (2020年1月21日 18時) (レス) id: a185b79d93 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - ルルさん» ご指摘ありがとうございます!紛らわしい書き方をして申し訳ございません…あくまで、炭治郎には火の呼吸という認識をワザとさせています。その後の閼伽が「日…ではない」と語っていますので、ここの間違いは意図的となります (2020年1月21日 18時) (レス) id: a185b79d93 (このIDを非表示/違反報告)
ルル - 珊しちでした (2020年1月21日 17時) (レス) id: 2200c5b181 (このIDを非表示/違反報告)
ルル - 珊じゅう話の炭次郎が言ってる呼吸が日の呼吸ではなく火の呼吸になってます (2020年1月21日 17時) (レス) id: 2200c5b181 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:タロ。 | 作成日時:2019年9月25日 21時