廿玖 ページ30
Aの嫌われようは酷かった。
姉さんに近づくなと、まるで首筋の毛を逆立てる猫のようにAを警戒するしのぶの姿はAにとって面白い以外の何者でもない。
自らの弟と年の変わらないしのぶは、いつしかAのなかで、手のかかる妹のような存在へと変わっていた。
だが、あそこまで拒否反応を示されるとどうもAのように強靭な心の持ち主でさえも落ち込むようだ。
現に、肩を落とすAにはどんよりと重い空気が漂い、落ち込んでいるのが丸わかりであった。
そういう点では分かりやすい男である。
『しのぶはいつになったら俺に懐いてくれるんやろか……』
「何であんなに嫌うんでしょうね?」
『俺が聞きたい……』
自分のせいだとは思いもしないA。
カナエと甘味処で休みながらそう零すと、カナエはフフフ…と上品に笑った。
『…笑わんでもええやん』
Aが少しむくれると、カナエは笑いを納めて、すみませんと小さく謝った。
「Aさんのような殿方が近くにいなかったからですよ、きっと」
急に距離を縮められて驚いたんでしょう、と語るカナエの横顔は完全に姉の顔で、Aは自分の姉の姿を重ねていた。
『……カナエも、ちゃんとお姉ちゃんやねんなぁ』
「急にどうしたんですか?」
『いやぁ、俺の姉ちゃんにそっくりやなぁって』
別嬪さんやしな、と悪戯に笑うAにカナエは少し頬を赤く染める。
Aもそれに気がついてはいたが、1度たりとも応えようとしたことは無かった。
「……しのぶを、よろしくお願いします」
『嫁には貰わへんで?』
「そういう意味じゃありませんよ」
『……せやったら、そんなこと言わへんことやな。』
「…………そう、ですね」
少し目を伏せたカナエ。
その頭をポンポンと優しく撫でるとAは勘定をする為に席を立つ。
大丈夫。言いたいことはわかってる。
そんな気持ちを込めて。
その時、既にカナエの周りには【死期の色】が取り巻いていた。
無論、それに気がついていたAは無意識にその拳を固く握っていた。
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隆弘 - 誕生日一緒だァァァァァ⁉︎今日から読み始めるので楽しみって感じです‼︎ (2022年7月25日 0時) (レス) @page1 id: 4c1fa166fb (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - 拙い説明で申し訳ありません……!ですが、ありがとうございます! (2020年1月21日 18時) (レス) id: a185b79d93 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - ルルさん» ご指摘ありがとうございます!紛らわしい書き方をして申し訳ございません…あくまで、炭治郎には火の呼吸という認識をワザとさせています。その後の閼伽が「日…ではない」と語っていますので、ここの間違いは意図的となります (2020年1月21日 18時) (レス) id: a185b79d93 (このIDを非表示/違反報告)
ルル - 珊しちでした (2020年1月21日 17時) (レス) id: 2200c5b181 (このIDを非表示/違反報告)
ルル - 珊じゅう話の炭次郎が言ってる呼吸が日の呼吸ではなく火の呼吸になってます (2020年1月21日 17時) (レス) id: 2200c5b181 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:タロ。 | 作成日時:2019年9月25日 21時