･ ページ39
･
「……恵くん？」
「お久しぶりです」
その後ろには同じような制服に赤いパーカーを覗かせた見慣れない青年の姿があった。
落ち着きなく辺りを見渡していたその青年は、恵くんよりも半歩後ろでこちらを見ている。
その視線が息子を捉え、僅かに揺れた。
グ、と唇を歪ませて鼻を啜った青年が、拳に力を入れて私を見る。
ゾワ……と嫌な予感がして、頭から血の気が引いた。
「虎杖、悠仁って言います」
震えた声で名乗り、頭を下げる青年。
頭を上げ、こちらを見た彼の目を見て分かった。
何かを伝えようと必死な、それでいて何かを決意したその目。
次に紡がれるであろう言葉がありありと想像できてしまって、氷が背筋をなぞったような寒気と恐怖を感じる。
聞きたくないとでも言うように、突然耳鳴りがした。
思わず息子を抱えた腕に力が入る。
抱き潰してしまわないようにベッドに下ろし、1度大きく呼吸をした。
口を開けるも空気が入らない。
上手く呼吸ができない。
首を絞められたような感覚がする。
「……いつですか」
彼らが口を開かないうちにそう尋ねた。
2人が息を飲んだのが聞こえる。
聞きたくないから、先に言葉を発した。
せき止められていた水が流れるように、空気の塊が口から出る。
かほ、と乾いた咳をひとつした。
彼らが驚いた理由はなんだろう。
私が泣かないからなのか、それとも知っていたのように言葉を繋いだからなのか。
「……10月31日です」
恵くんが、口を開いた。
「あれから結構長引いて……俺と虎杖も怪我が良くなるまで休んでいたんです。そうしたらこんな時期に」
「あのっ！！！！」
虎杖悠仁と言ったその青年が恵くんを遮る。
「……すみませんでした」
聞こえた謝罪の言葉。私は伏せていた顔を上げて悠仁くんの方を見た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 335人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒猫25 - ただただ感動しました。七海さん、推しなのでとても嬉しいです！ありがとうございます (2022年4月19日 22時) (
レス) @page47 id: 270b34836a (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - 六花さん» コメントありがとうございます…！七海さんらしい、という言葉が何よりも嬉しいものでございます。夫婦は似るもの、という言葉に倣ったエンドにしたかったのです。ハッピーエンドと感じていただけたのなら光栄でございます。本当に、ありがとうございます！ (2021年4月15日 8時) (レス) id: 6d2f9f581f (このIDを非表示/違反報告)
六花 - やっと七海さんらしい夢小説に出会えました。悲しくてさみしくて読みながら泣きました。終わり方もとてもよかったです。旧住まいに戻りそこから未来が続いていくと感じられたところが特に。最後の電話のやり取りなんて堪らないです。ハッピーエンドだと感じました。 (2021年4月13日 18時) (レス) id: 001585b729 (このIDを非表示/違反報告)
タロ。(プロフ) - マリイさん» あなた様の解釈に一致していれば幸いでございます。通りすがりにでも一読していただき、誠に有難うございました。 (2021年3月7日 18時) (レス) id: 6d2f9f581f (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - 建人は私の夫 建人の方からプロポーズして来た建人は私が居ないと私に愛されてないと建人死んじゃう建人は私には超過保護 (2021年3月7日 11時) (レス) id: 421640d4d1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：タロ。 | 作成日時：2021年1月28日 2時
