貴方の面影を。【七海建人】

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建人さんは私の言葉に頷いた。




「受肉するケース自体、ものすごく稀なんですが…。五条さんの話によれば、受肉した高校生が自我を保てているそうでしてね」

「異常はないと？」

「いや、身体の一部からは宿儺と意思疎通が我々にも可能だと言っていました。あらかた、どこかしらから口が出てくるなりするんでしょうね」

「それは……少々愉快な身体ですね」

「えぇ全く」

「……でも建人さん、その高校生は一体どうなるんですか？受肉したってことは…半分、呪いになってしまったようなものでしょう？」

「暴走さえしなければこれといって関係はありません。今は五条さんの保護下にありますから心配はないでしょう。ですが、本来なら彼は規定に基づき処刑対象です。……五条さんの我儘で、すぐに処刑という訳では無いようですが」

「まあ…………」






知識を入れておいてよかったと思った。
こういった時に建人さんのお話がすんなり入ってくるので、自分の勉強は無駄ではなかったのだと思える。

しかし話を聞くかぎり、中々に五条さんは権力者相手に我を通す人らしい。

僕、結構すごい人なんだよ？と本人が言っていたのを思い出す。
あの時は冗談だろうと思っていたのだが、あながち間違っていないということが今になって分かった。

確かに、あのタイプの人は権力者の保身が嫌いそうだ。







「少々忙しくなるかもしれません。宿儺に釣られて、呪霊の被害が増えてくるでしょうから」

「家のことはあまり気になさらないでくださいな。私ももうおおかたのことは1人で出来ますから」

「無理はしないと約束してください」

「それは、…………えぇ、約束します」







貴方もですよ、とは言えなかった。

その言葉は彼を縛ってしまう。
よく分かっている。


分かっているからこそ飲み込んだのだが、建人さんは少し顔を曇らせてしまった。








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