貴方の面影を。【七海建人】

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「伏黒恵くん…だったかしら」

「恵でいいです。お世話になります」





淡白な返しに拍子抜けする。

大人っぽい子だな、と感じた。
中に入るように促すと、お邪魔しますと一言。

礼儀正しい。

五条さんに引き取られていると聞いた時にはどんな素行の少年だろうと身構えてしまったのだが、彼にとても失礼だったと今更ながらに後悔する。
挨拶ができる子は基本的にいい子が多いという持論であった。




「恵くんはもうお昼食べましたか？」

「…まだです」

「私もです。…炒飯を作ろうとしていたのですけど、同じものでもいいですか？」

「はい……というか、敬語使わなくても」

「…ふふふっ」

「……？」





困惑した様子で私の顔を見た恵くんに思わず笑ってしまった。

深みのある青い目。
黒髪の間から覗く、まだ幼いその目が可愛い。





「ごめんなさい、敬語は癖なんです。誰に対してもこうなんですよ」

「そう…なんですか」

「お話、しにくいですか？」

「いやそういうわけじゃ」





慌てて両手を振って否定する彼にまた笑いが込み上げてくる。

顔を赤くした恵くんを見て笑いを収め、思わずヨシヨシと頭を撫でてしまった。

戸惑う様子も可愛い。






「さて！お昼、作ってくるので少し待っててくださいね。好きに座ってもらって構いませんよ」






もしかすると、急に距離を詰めすぎたかもしれない。


そう思ったのはフライパンを手に取った頃だ。

中学生だといっていたが、中学生といえば思春期真っ盛り。そんな子相手にベタベタしすぎた気がする。




……ごめんなさい、恵くん。
こんなオバサンにベタベタと……嫌だったに違いないだろう。ほんと、ごめんなさい。

簡単に済ませてしまった昼食にも申し訳なってくる。

ごめんなさいね…五条さんの連絡がもう少し早ければ、もっとマトモな料理をしたのだけれど……。




先程も思ったけれど、報連相は大人の基本では……？






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