FILE2・酒の名前と《Twilight》 ページ6
「――とまあ、工藤新一こと江戸川コナンこと少年探偵との出会いはこんな感じだったよ」
私がそう締め括れば、目の前に宮野志保ことシェリーこと灰原哀こと少女科学者は、そう、と小さく呟いた。
「Twilightがこんなにおちゃらけたヒトだったとはね」
「ふふふ、意外だろう？」
「灰原、コイツに嫌味は無効だぞ。思考が一般人のそれと乖離してるから」
少年が呆れ声でそう言葉を挟み、私は笑みを浮かべることでそれを肯定する。
この少女、姉の宮野明美の死の理由が全く説明されないとか、開発途中の毒薬を勝手に人に投与しただとか、そういうことに嫌気が差して組織に反発して閉じ込められたらしい。そして少年も飲んだ(飲まされた)毒薬であるAPTX4869で自害しようとしたそうなのだが、死ぬ代わりに幼児化したのだとか。
同じ運命を辿った工藤新一を頼ろうと組織から逃げ出し、阿笠博士の家の前で行き倒れたというけれど。
実験途中でもマウスが一匹幼児化したらしいとはいえ、投与された人間全てが幼児化とはまたすごい確率だと思う。
「私も飲んでみたくなったな。十年くらい若返るというのは面白そう……」
「死にたいなら飲めば？」
少女の素っ気ない言葉に、私は一つ頷いて問いかけた。
「まだ余りはあるのかい？」
「本気で試す気かよ!?」
思わずと言った風に少年が乱入した。「ダメかい」と至って不思議そうに問えば少女も本気だとは思っていなかったらしく、驚いた表情を見せる。
「確率的に死ぬ方が高いんだぞ!?」
「それなら私の運が悪かったということで一つ」
「ああそうだアカネさんってそういう人だった……」
少年が溜息を吐き、私がAPTX4869を手に入れようとジンにメールを送りかけた時、ようやっと口を開いた。
「死んだら二度と遊べなくなるけど、それでもいいのか？」
「それはダメだな仕方ない」
即決でメールをゴミ箱に放り込む。
少年が疲れたような表情を浮かべ、少女が私を珍獣を見る目で眺め、私は紅茶を一口口に含む。うん、不味い。
「……貴女、ジンとも知り合いなのよね？ Twilightは顔を見せないことで有名なのに」
少女の言葉に少年も興味を持ったようだ。二対の目が話を強請るように私に注がれ、私もこれ以上不味い紅茶を飲むのが苦痛だったので、カップをさりげなく遠ざけて口を開いた。
「七年前のことだよ。ちょうど私が二十歳になった頃だったかな」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 909人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
祝福を貴方へ(プロフ) - ハマっていた当時一番好きな作品でした。懐かしい気持ちになりながら再読。非常に面白い作品をありがとうございます。 (2021年11月26日 21時) (
レス) id: 1da6884cdd (このIDを非表示/違反報告)
愛 - すごく面白いです。長く続いているので、読みごあります。これからも頑張ってください。 (2017年7月26日 8時) (レス) id: a49300f60e (このIDを非表示/違反報告)
を。 - 白髪の子の設定もう少し簡単にしてほしかったです。長々しくて飽きちゃいました。 (2016年8月28日 0時) (レス) id: 193e3c63af (このIDを非表示/違反報告)
坂佐野 はずみ(プロフ) - 主人公ってかなりのキチガイなんでしょうか (2016年8月5日 23時) (レス) id: 5347212e91 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - 凄いですね！いつも楽しく読ませていただいております。難し言葉とかに詳しいんですね！これからも頑張ってください！ (2016年6月30日 21時) (レス) id: 34dd7aa040 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
