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にこやかに敬語で挨拶を紡げば、少年とルカが私をまじまじと見る。
「「……敬語使えたんだ(ですね)」」
「そういう印象があるのは否定はしない。否定はしないけれど失礼だと思わないかな?」
一応苦言は呈しておくけれど、少年はともかくルカは他人に対して素でこういうことを言うので無駄だろうね。
「……やっぱり、アカネちゃんか?」
確認するように問う銀三さんに、「でなければ一体誰だと」と私は返す。銀三さんはみるみるうちに顔を綻ばせた。
「いやぁ、随分大人っぽくなったなぁ! 今までどこにいたんだ?」
「インペリアル・カレッジ・ロンドンを卒業してから、アメリカのカリフォルニア、ネバダ、ニューヨークと巡ってきましたよ」
「そうかそうか。帰ってきていたというなら、青子や快斗くんも喜ぶからな。ぜひ今度会った方が良い。ところで……」
と銀三さんは怪訝そうにルカを見遣る。
「そいつは? 彼氏でもできたのか?」
「いや、彼は……」
ルカのことを紹介しようとしたところ、部屋からぞろぞろと他の人たちも出てきたので私は口を閉じた。《眠りの小五郎》で有名な毛利小五郎、その娘で少年の幼馴染の毛利蘭、その親友で鈴木財閥令嬢の鈴木園子、そして今回の挑戦を叩きつけた鈴木次郎吉。
「その娘っ子と小僧は誰じゃ? まさかキッドの仲間ではなかろうな」
「違うに決まってんだろじいさん」
銀三さんが鈴木次郎吉の言葉をバッサリと切り捨てる。私は一歩前に出て、キャップのつばを少しだけ上げてにこりと笑った。
「私はアカネ、二七歳のしがないフリーターさ。そしてこっちは、」
手でルカを示せば、ルカはフードを取って微笑む。
「僕はルカ=ロイドっていうんだ。よろしく」
「うわ、イケメン……!」
鈴木園子の目がルカに釘付けになり、それでなくとも髪色が目立つために向けられる視線。それが苦手なルカは、少し居心地悪そうな顔でまたフードを被った。
私はその頭に手を伸ばし、ポンポンと撫でる。
「訳あって私が保護している子だよ。精神年齢は五歳くらいだから子供に対するような態度で接してやってほしい」
「ほぉ……」
銀三さんは何となく事情があると察したらしく、すぐにルカから目を逸らして私に視線を移す。
「で、今回キッドが現れるっていうから見に来たわけか」
「そうですよ」
私は一つ頷いて、でも、と続けた。
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祝福を貴方へ(プロフ) - ハマっていた当時一番好きな作品でした。懐かしい気持ちになりながら再読。非常に面白い作品をありがとうございます。 (2021年11月26日 21時) (レス) id: 1da6884cdd (このIDを非表示/違反報告)
愛 - すごく面白いです。長く続いているので、読みごあります。これからも頑張ってください。 (2017年7月26日 8時) (レス) id: a49300f60e (このIDを非表示/違反報告)
を。 - 白髪の子の設定もう少し簡単にしてほしかったです。長々しくて飽きちゃいました。 (2016年8月28日 0時) (レス) id: 193e3c63af (このIDを非表示/違反報告)
坂佐野 はずみ(プロフ) - 主人公ってかなりのキチガイなんでしょうか (2016年8月5日 23時) (レス) id: 5347212e91 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - 凄いですね!いつも楽しく読ませていただいております。難し言葉とかに詳しいんですね!これからも頑張ってください! (2016年6月30日 21時) (レス) id: 34dd7aa040 (このIDを非表示/違反報告)
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