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酷く濃い殺気をいきなり浴びせられ、思わず身体は反射的に動く。簪を引き抜いてくるりと回転させ、先に着けている蓋を爪で引っ掛けて下に落とし、喉を隠すように逆手に構える。
「ホー……素人の動きではないな、どう見ても」
その声で完全に目が覚めた。目の前にいるのが殺気を抑えた赤井秀一であることを確認して、私は溜息を吐いて簪……の先を極端に鋭く削り上げた、ほぼ暗器といえるものを下ろす。
この簪は完全自作で、カモフラージュに蓋を被せればただの簪にしか見えないのだが。
「殺気を放つのはやめてもらえないか……? 酷く疲れた気分だ」
「揺すっても怒鳴っても起きないのだから仕方ないだろ?」
「嘘を言うな嘘を」
いや確かに試されても起きないだろうが、彼は絶対故意犯だ、わざとだ。
私は簪に蓋をまた被せ、髪の毛をくるりと纏めて刺し直す。
「一般人かそうでないか、最後の選別といったところかい?」
「あぁ。……君は一般人ではなく、《ジン》と呼ばれる人物と繋がっていて、何より俺をFBIだと知っていた」
赤井秀一の瞳が剣呑な光を湛え、私はにっこりと笑みを見せる。見えない火花が散ったのは、きっと気のせいではなかった。
さぁ、たっぷりと遊んであげようじゃないか。
◇ ◇ ◇
フルネーム以外の重要な情報は一つも漏らさず、相手をおちょくるか挑発し、時にはわざと些末な情報を漏らして油断させることで適当な情報を引き出し、更に内心を悟らせないようなポーカーフェイスを保つ。
赤井秀一相手ではとても難しいこの一連の行動、尋問役がジョディ=スターリングに変わった瞬間から楽すぎてつまらなくなってきた。
私をあの組織の構成員だと思っているからか、最初から喧嘩腰。更にFBIということに非常に高いプライドを持っているため、そこを突けば早々と激昂し。
「……何が起きた?」
「やぁ赤井秀一、ちょっとこの人は感情的すぎやしないかい? 遊びにならなくてつまらないよ」
「貴女ねぇっ……!」
最終的に仮眠から戻った赤井秀一が、険しい顔のジョディ=スターリングと興味ないを通り越して眠たそうな表情を浮かべる私を見比べ、瞬時に状況を把握したのか即座に尋問役を交代した。
「うん、やはり君相手じゃないと駆け引きもつまらないね」
「こちらとしては早く情報を吐いてもらいたいのだが」
赤井秀一が「拷問などもできるんだぞ?」と脅してくる――が、私は逆に目を輝かせた。
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祝福を貴方へ(プロフ) - ハマっていた当時一番好きな作品でした。懐かしい気持ちになりながら再読。非常に面白い作品をありがとうございます。 (2021年11月26日 21時) (レス) id: 1da6884cdd (このIDを非表示/違反報告)
愛 - すごく面白いです。長く続いているので、読みごあります。これからも頑張ってください。 (2017年7月26日 8時) (レス) id: a49300f60e (このIDを非表示/違反報告)
を。 - 白髪の子の設定もう少し簡単にしてほしかったです。長々しくて飽きちゃいました。 (2016年8月28日 0時) (レス) id: 193e3c63af (このIDを非表示/違反報告)
坂佐野 はずみ(プロフ) - 主人公ってかなりのキチガイなんでしょうか (2016年8月5日 23時) (レス) id: 5347212e91 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - 凄いですね!いつも楽しく読ませていただいております。難し言葉とかに詳しいんですね!これからも頑張ってください! (2016年6月30日 21時) (レス) id: 34dd7aa040 (このIDを非表示/違反報告)
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