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顎に指を当てつつ、目の端でバスの車内全体を見渡したところ、怯えを装いつつも普段通りの意識を保っている者や、全く動じていない者が合計四名。うち一人は私の隣のマスクをした男性で、もう一人は私と線対称の位置に座っているガムを噛んでいる女。

残り二名は少年と少女の前の席に座っているけれども、片方はよくよく見ればベルモットが扮した男性なので除外。

マスクの男性の口調は何だかバスジャック犯を非難しているような、迷惑だと思っているような節が見えた。仲間なら『喚いている』『奪い取っている』なんて表現は使わないだろう。ということで彼も除外。

残った二人は、と見ていると、ガムを噛んでいる女に向けて発砲する男。……女は表情を変えるけれど、顔色が全く変わらない。

これは当たりか、と思って見ていれば、残り一人の金髪眼鏡の女性が男の足を引っ掛けて転ばせた。然り気無さを装っていたが確実にわざとだ。


悪態を吐く男に大袈裟に謝って、ペラペラ英語を垂れ流しながら拳銃を握り。


「……へぇ」


撃鉄を起こして安全装置をかけた。

これで確実にガムの女が彼らの仲間だと分かったわけだが……場慣れしている彼女は一体何者か、と考えたところで。


気づいた。


金髪に黒縁の少し大きめの眼鏡、会話していたところからみるに少年とも知り合いらしい彼女。赤いルージュが目を引くその人。


そして一見彼女とは無関係を装う、今はマスクをしているけれども隠せない目の下の隈に、ニット帽を被ったグリーンの瞳の男。


何よりこちらの彼は、《バスジャック》ではなく《ハイジャック》と言っていた。バスジャックとは和製英語だが、日本人としてはむしろそちらの方が馴染みのある言葉。
つまりさらりとその言葉が出た彼は、英語に慣れている人間であり。


「……FBI、か」


マスクの男性――赤井秀一が、私の呟きにピクリと眉を動かす。少しだけ油断していたらしく、咄嗟に出てしまったその反応で充分確信できた。


最悪彼らに制圧されるのだろうな、と考えれば一気に気分が落ち込んだ。

そんな面白くない結末、嫌だ。


  ◇ ◇ ◇


どうやら要求が通ったらしい。上機嫌な犯人のうちの一人が、スキー板を入れるはずのバッグを二つ、バスの通路を全てカバーするように縦に横たわらせる。

少年が何かに気づいたようにそのバッグに近寄って。そっと中を探ろうとし――犯人が気付いて少年にトカレフを向けた。

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祝福を貴方へ(プロフ) - ハマっていた当時一番好きな作品でした。懐かしい気持ちになりながら再読。非常に面白い作品をありがとうございます。 (2021年11月26日 21時) (レス) id: 1da6884cdd (このIDを非表示/違反報告)
- すごく面白いです。長く続いているので、読みごあります。これからも頑張ってください。 (2017年7月26日 8時) (レス) id: a49300f60e (このIDを非表示/違反報告)
を。 - 白髪の子の設定もう少し簡単にしてほしかったです。長々しくて飽きちゃいました。 (2016年8月28日 0時) (レス) id: 193e3c63af (このIDを非表示/違反報告)
坂佐野 はずみ(プロフ) - 主人公ってかなりのキチガイなんでしょうか (2016年8月5日 23時) (レス) id: 5347212e91 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 凄いですね!いつも楽しく読ませていただいております。難し言葉とかに詳しいんですね!これからも頑張ってください! (2016年6月30日 21時) (レス) id: 34dd7aa040 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:初弦 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2016年5月25日 15時

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