無表情さんはストレスがたまっているようです【今日から俺は!!】

無事に解決したようです ページ10

「何やってんだ、お前ら」

「……あー…やってらんね」


相良が私の髪から手を離す
重力に逆らうことなく私は顔を勢いよく床に叩きつけた

…これは痛い


それでも、ずっと倒れてるわけにはいかない
両手を使って立ち上がり、相良を止めた声の主の方を見る

その人の第一印象は、


「おっきいね〜」


…優さんが代弁してくれた

にしても、あの悲鳴で本当に人が来るとは…
って、この人が着てる制服、開久じゃ……


「さ、智司さんっこれは…！」

「何もしてねえ女一人に、汚ねえ手ェ使って…言い訳して挽回できるモンでもあんのか？」


どすの利いた声で騒ぐ取り巻きを沈めた智司という人
次に私達の方を見て、「すまなかった」と言って頭を下げた

…にしても、なんでこの人は事情を知ってるんだ？


私の疑問に気づいたのか、彼は理由を話し始めた


「お前らの働いてる喫茶の店長が、一人で開久に乗り込んできてよ…
頭地面に擦り付けながら「どうか止めてくれ」って頼んできやがったんだ」

「…」

「大の大人の男が、名前も知らねえ奴に薄っぺらい気持ちで頭下げねえだろ？
だから、俺はそいつの男気を買っただけだ」


叔父さん…隠れてそんなかっこいい事を…
そして智司さん、この人達とは違ってなかなか話のわかる人だ。これまた、新しいタイプ


「すまねぇな。もう寄らねえように、言っておくからよ」


そう言って工場を去る。それに続いて他の開久生も
…嵐みたいだったな


「…Aちゃん…店長、カッコいいわね」

「……それ、本人の前で言ったら、勘違いされますよ」



・



「Aさん、おはようございますっ…ってどうしたんすか、その怪我！！」

「…バイト」

「どんなバイトっすか！！」


翌日、包帯ぐるぐる巻きプラス、頬っぺたにガーゼで登校すると、
珍しくHR前から教室に居た佐川に絡まれることとなった


「喫茶店」

「喫茶店！！」


同じ言葉を言ったはずなのに、このテンションの差だ
…なんか、面白いな


「…あ！今、笑いましたか！？」

「…は、」

「あぁ〜戻っちゃった…！」


何言ってんだこいつは。そんな気持ちを込めて、ジッと視線を送る
私が笑う？…そんなまさか


「いや、だって、ちょっと口の端がクイって…そのクイって！」


そう言って、両手で口の端を持ち上げ、自分でやって見せてくれる佐川
どう見ても変顔にしか見えない


「あ、また笑いました！？」

「知らない」


…やっぱり、仔犬もいいかもしれない

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