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「ねぇねぇAさん」
あんまり話したことがない人に声をかけられた。
『なんでしょうか』
「今日、チョンくんと一緒に来てたよね」
『そうですね』
来てたよね？って聞かれたからこれはイェス／ノーの問いだよね？
「なんで？」
『それは……彼に聞いてください……』と言いたいところだったけど、言なんとか飲み込みたまたま今朝会ったんですよ、とその女の子に返す。
「ふーん」
そうすればその女の子は興味を無くしたかのように目の前から立ち去った。
言うなれば、彼女はカーストの上位の女子。
私が苦手とするタイプの面倒な女子だ。できれば関わらずに穏便に済ませたかったのに、彼――イケメンくんのせいでそうはいかなくなったみたいだ。
「……Aさん」
『……えっと、ジョングクさん、どうしました？』
そんなことを考えていたら急に考えていた御本人様に自分の名前を呼ばれて驚いた。
「今日の放課後の図書委員、手伝ってくれないかな」
『……えっと』
人手が足りなくて……と目線を落とすイケメンくん。そんな彼を見たカーストの上位の女子は私も……と言いたげにジョングクくんのことを見るが、そちらには一瞥もくれず、つらつらと話し始める。
「季節の飾り付けがあるんだけど、僕と当番のひとは部活で忙しいみたいで……よかったら今、図書室掃除のAさんに頼みたいんだけど……」
ダメかな、ときゅるんとした丸い瞳がこちらを見てくる。
ジョングクくんは、こういうキャラのままで平時も過ごしているとみんなは思ってるんだろうなぁ……
まぁ、全然そんなことはなかったんだけど……むしろ、反動なのかかなりオラついてる感じだったけど。
『……私でよければ』
「わぁ、ありがとう。助かるよ、Aさん」
『いえいえ』
もはや私は最後の方は棒読みだったけど、ジョングクくんは最後までちょっと口角を上げた笑みを絶やさなかった。
どんだけ演技派なんだか……と少々呆れつつも、そのまま教室を出て行くジョングクくんの背中を見送ったのだった。
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作者名：木染 凌 | 作成日時：2022年2月12日 22時
