正論パンチの緩和材【北信介】

エピローグ1 ページ9

ミーティングも終わって、部屋へ戻る。
前を歩く北くんに、声をかけてみる。


「やっと、私らもここまで来れたな」

明日から、私達の最後の春高が始まるのだ。


「正直、ようやったなーって思う」

「そうなん？勝手な想像で、当たり前やって思ってそう、なんて思っとった」

驚いた。

そりゃあ、よくやったとは思うけれども、彼にとっては口に出す程でも無いだろうと思っていた。


そやなぁ、といつもの調子で彼は言った。

「まあ、振り返ってみれば当然の結果やったんかもしれへんわ。こんなに凄い仲間がおるんやもん」

いつも厳しい北くんの、ふとした時に垣間見える仲間への厚い信頼にはいつも、どうしようもなくこちらまで心強くさせられてきた。


「頼もしいなぁ」


彼はせやろ、と言った。
きっと、凄い仲間のことを思って言ったのだろうけど、北くんだって頼もしい。

「明日からも、仲間と自分を信じるだけや」


これまで、荒削りな姿で懸命に一瞬にぶつかってきたわけで。

私はプレーヤーではないから過程と挑戦を繋ぐことはできひん。
けど、最強の挑戦者の最善の過程は見てきたから。


「私も、信じとるよ」

ありがとう、と笑った彼の顔は幸せ、という言葉をこの上なく体現しているように見えた。

「なあ、春高が終わったら、聞いてほしいことがあるねん」

いつも思ったことはその場で述べるタイプの彼が話を先伸ばしにするなんて珍しい、と思った。


「わかった。待っとるな、出来るだけ長く」


優勝してから、聞けたらええな。

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