正論パンチの緩和材【北信介】

大切 ページ7

深呼吸をして、できるだけ穏やかな雰囲気を纏うことを意識する。

「なあ、ちゃんとってどんくらい？…さっきの正論パンチはさ、私に向けた言葉やなかった…やんね？」

彼の顔が少し困惑の色を見せた。

「北くん自身に…やないかな…って思うで？」

「俺…か？」

ゆっくりと優しく、しかし弱くならないように語りかける。

「もっと自分を大切にした方がええと思うねん。正しいと厳しいは、絶対に同じなことでもないんちゃうかなって」



ふと、北くんの目が見開かれた。

「ほんまやな」


すると、尾白くんがバタバタと駆け寄って来た。

「も〜、ヒヤヒヤしたわ！頑固な北といっつも優しいAが喧嘩か思て…」

焦る様子に少しクスッと笑ってしまう。
北くんの方を見ると、柔らかい雰囲気で笑顔を見せていた。
ああ、良かった。

「しかし意外やったわ、Aって意外と強気なんやなぁ。北に物申せるなんて」

「そんなことないよ、でも思い悩むチームメートを助けるんはマネージャーの仕事やから」

「うっわ、かっこええ」なんて大きな声で言われて照れてしまう。

「マネージャーは主将になれへんけど主将もマネージャーにはなれへん、やんな、北くん」

「Aこそ、ちゃんと、やっとってんな」

「うん。わかったで、私にできること。やから北くんも頑張っ…」

あかん。今は『頑張って』は禁句や。
そう気付いて手で口をふさぐ。

「えっと、えーっと…」

「落ち着け、A」

「わかっとるで。やりすぎはちゃんとやない、やんな」

3人で同時に笑った。

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