正論パンチの緩和材【北信介】

迷い ページ1

春高が終わって、3年生が引退して。

チームの人数もがらりと減った。



バン、と張り裂けるようなボールを打つ音と、ダン、と打たれたボールが床に当たる音が響く。
皆、新しいチームを強くしようと懸命に練習をしているのだ。


みんな頑張ってんねんから、私も一緒に頑張らな。


気持ちを入れ直して出したボールが打たれたその後、ほんの一瞬、体育館がしんと静まり返る。

静かになったのはほんの偶然に過ぎない。
けれどもその静けさが、どこか重たく感じてしまう。


3年生が引退してから、時々、空気を支配するかのように現れるそれを誤魔化すかのように、ごくりと息を飲む。


次の瞬間には、いつもの音が溢れていた。



最後の一球を出して、ピー、と大きな音で笛を鳴らす。

「休憩でーす」



ふう、と息をつく部員達の中には険しい顔をしたままの人もいた。
メンタルケアもマネージャーの仕事だ。


とんとん、と背中を叩く。

険しい顔をしている内の1人、北くんは新しいチームのキャプテン。

「そんな顔しとったら、うまいこといくもんもうまくいかんようになってまうで」

「ああ、心配させてしもてごめんな。みんながキツい顔しとるから、どないしたらええかな…って思てたねん」

何か思い悩んでいることがあれば力になりたい、なんて思っていたが、返ってきたのはしっかりした彼らしい答えだった。

「私も同じこと思とってん」

どないしよう、と2人で唸る。

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