高校生女子No.1セッターがいるらしい 【ハイキュー】

2人の話 ページ21

白布side

ロードワーク？
牛島さんが毎朝してるのは知ってるけど……
しかも牛島さんより早い時間から…
そんなこと知らないし聞いてない
あいつは昔からそうだ
“平気なフリ”をしてる


ここで少し俺達の話をしよう

俺が生まれたのは5月4日
あいつが生まれたのは5月1日だ

もちろん生まれたのは同じ病院
そこで親同士が知り合って仲良くなった
家が近いということも判明した

それから俺らはいつも一緒だった
遊ぶ時も昼寝をする時も
だから小さい頃の写真には
2人で写ってるのがほとんどだと思う

あいつは幼稚園に入る前
「私が賢二郎のお姉ちゃんになる」
と言ってから
俺の世話をよくしてくれるようになった

俺は小さい頃よく泣いていた
その理由は親に怒られたり怪我をしたりと
様々な理由だ
そんな時あいつは必ず
俺の頭を撫でながら
「大丈夫」
って泣き止むまでひたすら抱きしめてた

そんな毎日が終わったのは小学校に入る前
おばさん……あいつの母親が死んだ
急性の癌だと言ってた
俺はおばさんのことが大好きだったから
その時も泣いていた
そんな時でもあいつは“平気なフリ”をして
必死に涙を堪えながら
「大丈夫」
と言って抱きしめてくれた

それからあいつは変わった
父親と過ごすようになってからだ
小学校でしか会うことはなく、
あまり笑わなくなったし、
腕とかに痣ができるようになった
多分父親からの暴力が原因だろう

小学2年生になってあいつは
近くにあるおばあちゃんの家に住むようになった
父親と離れても笑わないあいつに俺は言った
『見返してやれ』
って

そしたらあいつはまた人が変わった
勉強もバレーも倒れるんじゃねぇかってくらい
必死でやってた
多分周りが見えてなかったんだと思う

このままでもいけないと思って
今度は俺があいつに
『大丈夫』
って言って抱きしめた
それからは落ち着くようになって
今に至る感じだ

ざっと話したけど
俺らの今まで歩んできた17年はそんな感じだ


ある日あいつが俺に言った
「賢二郎には私を動かす力がある
賢二郎の言葉ひとつで
私はいい方向に向かうかもしれないし
悪い方向に向かうかもしれない
もし私が悪い方向に向かおうとしたら……
助けてね、私の事」

それからはAに対する言動には
気をつけるようにしている

また周りが見えなくなってないといいけど……

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