▽38 推理 ページ38
身支度を整えて、ほぼ当ても無く夜の街を歩く。
お姉ちゃんを見つけなきゃ、早く。
隣には左京も真澄もいるから怖いなんてことは全くない。
「私が前五十嵐さんを見たのは……この辺で」
辺りを見渡すと、月に照らされた袋が見えた。何かと思ってそっと触れる。袋だった。
恐る恐る中を見ると、少しのスパイスの包装された何か。
でもこのスパイスがあることからお姉ちゃんのものだと言うのはすぐ分かった。
「やっぱり、監督はここであいつに攫われて……」
「まず状況が一つ分かったんだ。問題は何処にいるか、だ」
予想だが、袋の口が向いている方だと思っている。途中まで袋を持っていたけど、攫われたときに少し引きずってそのまま離したとすれば持ち手がそちら側に向いているとかあるだろうし、あるいは五十嵐さんのことだからからかう意味で袋の向きを分かりやすくするかもしれないと思った。
「私は、こっちだと思う」
「こっちだと、前の倉庫と同じ場所だな……」
はらり、とお姉ちゃんと同じ色の髪の毛が垂れた。
私はすぐに耳にかけ直す。
そういえば、髪を伸ばしていたのは昔お姉ちゃんの真似をしていたからだっけ。
* * *
ぼんやりとした頭が、徐々にはっきりとしていく。
起きているのか寝ているのか、周りは真っ暗だった。いっそのこと夢であったら楽かもしれない。
けど、夢じゃないことは今触れているこの床の冷たさが示している。
「お目覚めか」
「……」
「おい、なんか言えよ」
「この縄、解いて」
手は後ろで固定されていて、いつの間にか床に寝転んでいたため起き上がることが出来ずに困っている。最近動いていなかったため腹筋だけの力で起き上がることが虚しくも出来なかったのだ。
「口を開けばそれか。まぁ、あいつらにヒントはやったからそのうち来るだろう」
「ひ、んと……?」
「袋の向きだ。あの嬢ちゃんとか、勘がいいから気付くんじゃねぇか?」
そんな小さなことで気づくとは思えなかったが、今はみんなを信じることしかできなかった。
それにしても、こんな真っ暗なところでどうしてすぐに起きたとか把握できるのだろう。
相当目が慣れているのだろうか。
「ねぇ、ここは何処なの?」
「さぁ。何処だろうなぁ?でも、あんたらが絶対知っている場所だ」
――考えるとすればあの倉庫か。
話すこともなくなり沈黙が続いたそのときだった。
――バァンッ!!
……扉が勢いよく開く音と、今の自分には明るすぎるほどの月の光が差し込んだ。
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あいちゃん(プロフ) - 柚子さん» ((・∀・*)(*・∀・))ィェィェ♪嬉しいです!真澄落ちは少ないので…だいたいが監督と真澄って感じなのでこの小説見つけた時は嬉しいかったです! (2018年1月20日 21時) (レス) id: 9afa5d89f1 (このIDを非表示/違反報告)
あいちゃん(プロフ) - その後主人公は誰と付き合うのかストーリー欲しいです!続編お願いします(*-人-) (2018年1月19日 18時) (レス) id: 98e3bdc9b3 (このIDを非表示/違反報告)
柚子は多忙で更新停止中(プロフ) - いぎさん» ありがとうございます!亀更新ですので更新まで長いですが気長にお待ちください(`・ω・´) (2017年12月2日 19時) (レス) id: 0f9b565f22 (このIDを非表示/違反報告)
いぎ(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました!!続き楽しみにしています!! (2017年12月2日 9時) (レス) id: 71787ff6cd (このIDを非表示/違反報告)
柚子(プロフ) - 雪見さん» 夢主がある日をきっかけに嫉妬の目でしか見られなくなり嫌いになってしまっただけでお互い良い子というつもりで書いてます。私の文章が拙く伝わりづらくて申し訳ないです(^^;) (2017年9月21日 19時) (レス) id: f3b070ef7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子 | 作成日時:2017年8月20日 18時