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▽29 嫌な空気 ページ29

私は銀泉会の会長さんの家に行くと、真っ先に左京の姿を探した。
「会長さん、左京さん、いますか!?」
お姉ちゃんも呼びかける。が、特に反応がなかった。
怖くなって周りを見渡すも、人の気配があまりしない。
ぞわり、と背筋が凍った。
「……A」
「……ぉわっ!?」
あまりにも驚き、情けない声が漏れた。
振り返ると、そこには見慣れた姿があった。
「ま、すみ……!?」「真澄くん……!?」
二人の声が被る。
「Aも監督もいきなり家を出てくから、何かと思った……」
息を切らし、汗をかいた真澄がそう言った。心配かけたな、と思うと何だか申し訳なくなった。
「ごめんね、真澄」
「なんで謝るの」
それ以上は何も言わなかった。ただ何となく、続く言葉が出てこなかったのだ。代わりに、お姉ちゃんが家を出た理由を教えた。
「またあいつ……あんたたちはあいつしか見てないの……」
ちょっとしょげた後、真澄はすぐ気持ちを切り替えたのか話を始めた。
「多分、近くにいる。直感でしかないけど」
でも直感すら感じられない私達からすれば、それを頼るしかなかった。
暫く三人で探して行くと、なんと言ったらいいのか……、微妙な空気を感じた。

「さ、きょう……?」
私は周りを見渡した。近くには、大きな倉庫があった。
それを見たとき、全員が”嫌な空気”を感じ取った。明らかに、あそこにいる。確信はないけど、そんな気がする。
曖昧だけど、絶対いる――。
何も言わず、私達は走り出した。言わなくなって、何をしようとしているかくらい分かった。
お姉ちゃんも、真澄も必死で走っている。真澄に至っては嫌がってそうな雰囲気さえしているのに、こんなにも必死に走るって普通じゃ出来ないんじゃないかな――。
お互いが大切に思う気持ちがこういう行動を生み出していると思うと、それはすごいことだと思った。

「――っあ」
喘ぐ声が聞こえた。誰のものかは分からなかったが、少しでも危険な目に遭わせないためにとにかく急いだ。
どうか、みんなが無事でいますように。

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あいちゃん(プロフ) - 柚子さん» ((・∀・*)(*・∀・))ィェィェ♪嬉しいです!真澄落ちは少ないので…だいたいが監督と真澄って感じなのでこの小説見つけた時は嬉しいかったです! (2018年1月20日 21時) (レス) id: 9afa5d89f1 (このIDを非表示/違反報告)
あいちゃん(プロフ) - その後主人公は誰と付き合うのかストーリー欲しいです!続編お願いします(*-人-) (2018年1月19日 18時) (レス) id: 98e3bdc9b3 (このIDを非表示/違反報告)
柚子は多忙で更新停止中(プロフ) - いぎさん» ありがとうございます!亀更新ですので更新まで長いですが気長にお待ちください(`・ω・´) (2017年12月2日 19時) (レス) id: 0f9b565f22 (このIDを非表示/違反報告)
いぎ(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました!!続き楽しみにしています!! (2017年12月2日 9時) (レス) id: 71787ff6cd (このIDを非表示/違反報告)
柚子(プロフ) - 雪見さん» 夢主がある日をきっかけに嫉妬の目でしか見られなくなり嫌いになってしまっただけでお互い良い子というつもりで書いてます。私の文章が拙く伝わりづらくて申し訳ないです(^^;) (2017年9月21日 19時) (レス) id: f3b070ef7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚子 | 作成日時:2017年8月20日 18時

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