【碓氷真澄】姉が嫌いな監督の妹【古市左京】

▽17 見えぬ気持ちは ページ17

Aは水を飲みに行ってしまい、俺は部屋にひとりとなった。
なんで泣いていたのだろうか。
昔の夢と言っていた。俺や監督さんが関わるのだろうか。
気になってしまってしょうがなかった。
ちなみに何故Aを俺の部屋にしたかといえば、一人部屋だから、くらいの理由だった。
本当は同性が望ましいのだが、監督さんが嫌いなようなのでそうはいかない。
よって、俺の部屋に来たということである。

寝ているAは可愛い、というより美しいと形容した方があっていた気がする。
涙が零れ落ちたときは胸が締め付けられるような、なんとも言えない感情があった。
――なんでそんな気持ちになったのかさえ分からない。

Aが戻ってきた。
俺はこいつをどう思っているのだろう。こいつは俺をどう思っているのだろう。
見えない気持ちを見ようとしすぎて、訳が分からなくなるばかりだった。

* * *

翌日。嫌な夢を見てあまり気分が良いとは言えない私とは反対に快晴だった。
曇りや雨が良かったとも思わないが、晴れの日というのは自分の気分が良いときに楽しみたいものだ。

左京は夜遅くまで経理関係の作業をしていたようだった。詳しくはないからはっきりとは断定できないが。
画面と向き合いながら作業しているのを深夜に目を覚ましてしまったときぼんやりと見た。
異常に早く起きてしまった私は、そんな疲れきって眠っている左京を眺めている。

やっぱり、眼鏡がないと幼く見える。
寝ている左京に触れようと思ったが、やめた。
私はもう気持ちにけりを付けなければならない。そんな気がしていたからだ。

伸ばしかけていた手を引っ込めて、姉に会わなきゃいけないのかとため息をついてか部屋の扉を開けた。
あの夢を見たせいで、嫌だという気持ちがより一層強くなってしまった。

▽18 電話→←▽16 夢

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す