とある伝承 ページ20
昔々あるところに、とても美しい純白の髪と、血のような赤い目を持った美しい男がいました。
その見た目の麗しさから最初は周りからもてはやされてきた男でしたが、その男が老いていくことはなく、それを気味悪がった周りの人間達は次第に男を忌み嫌うようになりました。
男は苦悩しました。
「なぜ自分は老いないのか」
「なぜ自分の目は赤いのか」
「なぜ自分の髪は白いのか」
普通の人間と違う部分に悩み、悩み、悩み続け、男は自暴自棄になりました。
ふと鏡を見たとき、男は自分の口に人のものとは思えないような牙があることに気づきました。
鋭く、いとも簡単にすべてを噛みちぎれそうな牙でした。
男は気づきます。
「俺は、吸血鬼だったのだ」、と。
そう口に出してしまったが最後、男は急激に自分の喉が渇くのを感じました。
今までは意識していなかった人の血というものを渇望し始めたのです。
男は家から出て、迷わずに人間に囓りつきました。
何人もの人に牙を突き立て、首を噛み千切り、血を飲みました。
喉の乾きが潤ったとき、男は自らが起こした惨状を見て、動揺し、傷つきました。
本当に自分は人間ではなかったのだ、と意識してしまったのです。
しかし人間でなくなってしまった以上、もう今まで住んでいた家にはいられない、と思いました。
男を恐れた村の人々もまた、男を村から追い出そうとしました。
男は、村の直ぐ側の山の奥深くにある洞窟に一人、身を隠しました。
そんなある日、洞窟に生贄としてやってきた少女がいました。
その少女は吸血鬼の凍った心を溶かし、二人で洞窟で過ごすようになりました。
しかし、少女は洞窟の中でそう長くは生きられませんでした。
吸血鬼は無くなる間際の少女に対し、生まれ変わった少女を必ず探し出すと約束しました。
そしていまも、吸血鬼はその少女を探しているそうです。
223人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Asuna(プロフ) - Eryngiumさん» Eryngiumさん、ありがとうございます!これからも頑張ります!! (11月27日 7時) (レス) id: ef68d1b102 (このIDを非表示/違反報告)
Eryngium(プロフ) - 完結おめでとうございます!心理描写がとても丁寧ですごく読みやすかったです。これからも活動を応援しています!! (11月27日 0時) (レス) @page22 id: 663ca84b4d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Asuna | 作成日時:2023年11月24日 19時