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13-side kzh- ページ14

町へと続く道を進みながら自問自答を繰り返す。


俺はなんであんな初対面の女にここまで世話を焼こうとしているのか。


なんであんなに仲良く喋れてしまっているのか。


相手は人間だろ、情を持つな。


理性は俺にそう叫んでいるのに、なぜか感情は言うことを聞かない。


あの女が笑うのを初めてみたとき、一瞬言葉に詰まった。


この何百年で見てきた何よりも美しいものに見えてしまった。


いってらっしゃい、と声をかけられたとき、いつか夢見たのであろう理想的な家族の形に見えて一瞬頬が緩んだ。


帰ってくる場所を明確に「家」と認識できた気がして心が暖かくなった。


邪念を振り払うように頭を振り思考をクリアにする。


そもそもあの女もあの女だ。


頭の回転は早いくせに俺の言ったことをすぐに信じる。


初めて会った奴に、しかも人間でもなくヴァンパイアに、ここまで気を許してしまえる無防備な人間などいるものだろうか。


それとも、その無防備さすら、その無知さすら人は美しいもの、と捉えるのだろうか。


それなら人間は愚かだというほかこの上ない。


自衛の術すら持たず、丸腰で、それは自然界では圧倒的強者の前に淘汰されていくだけなのだから。


俺は自らを省みて自虐的な笑みを溢した。


その美しい人間に懐柔されてそいつのために動こうとこんな所まで来たのはほかでもない俺だ。


愚かしすぎる美しさの概念に惑わされたのは俺だ。


考え事をしている間にも体は勝手に動いて町にたどり着き、魔術を発動させて人間に変身していた。


俺がこうやっている間にもあいつはあの場所で健気に俺の帰りを待っているんだろう。


絶対に、本当に俺がそこに帰る保証なんてないのに、ずっとあのソファに座っているんだろう。


そして帰れば俺に笑顔で言うんだろう。


おかえりなさい、と。


俺がいつまで経っても帰らなければ、あいつはどんな顔で俺を待ち続けるんだろうか。


そして俺が何年後かにそこに帰ったとき、あいつはどこで死 んでいるんだろうか。


やはりあのソファの上で丸くなっているんだろうか。


そう思いながら俺は紙パックのいちごミルクを2つ、手に取った。

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Asuna(プロフ) - Eryngiumさん» Eryngiumさん、ありがとうございます!これからも頑張ります!! (11月27日 7時) (レス) id: ef68d1b102 (このIDを非表示/違反報告)
Eryngium(プロフ) - 完結おめでとうございます!心理描写がとても丁寧ですごく読みやすかったです。これからも活動を応援しています!! (11月27日 0時) (レス) @page22 id: 663ca84b4d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Asuna | 作成日時:2023年11月24日 19時

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