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私が住んでいる小さな村には未だ言い伝えがある。
この村のすぐ横にある山には洞窟があり、その中に何百年も前から吸血鬼が住んでいる、という伝説だ。
私を育ててくれた召使いが教えてくれたのだ。
もちろん、そんなこと信じていなかったが。
しかしいま現在、私は否応なしにその言い伝えが事実であると認めざるを得ない状況に追い込まれている。
その吸血鬼のための生贄に私が選ばれたからだ。
馬鹿げている、と思うかもしれないし、私もそう思っているが、マジだ。
時は今日の朝に遡る。
私の家は村では有名な大地主だと聞いていたし、実際私は裕福な暮らしをしていた。
朝起きると朝食は召使いによって用意されているし、家の外に出なくとも困ることはなかった。。
しかし、今日の朝は少し違ったのだ。
朝目覚めて朝食が出てくるまでの流れは同じだったのだが、その朝食を運んできた召使いが私の顔を見るなり大号泣し始めたのだ。
もちろん意味がわからない。
何故泣いているのか、何があったのか、私がなにかしてしまったのか。
その人は泣いている苦しそうな呼吸の中、こう言ったのだ。
「どうか苦しみのないよう。」
その時は意味がわからなかったが、今考えると明白だ。
できるだけ苦しまずに殺されてほしい、といったところだろう。
まあ、そういうわけで朝食の時点ですでに違和感だらけだったのだが、その違和感は更に膨らんでいく。
いつもなら所謂普通の服、を着るわけだが、今日に限っては白無垢のような着物が用意されており、たくさんの人間の手を借りて着付けてもらった。
結婚させられるのか、と思い母親に尋ねてみるも、違う、の一点張りである。
そして今に至るわけだ。
なぜ私が生贄にされるのかも全くわからないまま、私はなぜか村の祭壇で祀られている。
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Asuna(プロフ) - Eryngiumさん» Eryngiumさん、ありがとうございます!これからも頑張ります!! (11月27日 7時) (レス) id: ef68d1b102 (このIDを非表示/違反報告)
Eryngium(プロフ) - 完結おめでとうございます!心理描写がとても丁寧ですごく読みやすかったです。これからも活動を応援しています!! (11月27日 0時) (レス) @page22 id: 663ca84b4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Asuna | 作成日時:2023年11月24日 19時