月明かりの下で (ページ25)

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一件落着…？ページ25

｢私は…皆さんが羨ましかったのです。２本の足で自由に動けて、自由に想いを伝えられるのが…それで、どんどん嫉妬して気づいたら…｣
｢人を襲うようになった…と。お主はそう言いたいのか？｣

頼朝さんの声に目の前の人魚はびくりと肩を震わせる。でも、その声は決して咎めるようなものではなくどこか同情したような声だった。

｢我も同じことがあった故にそなたの気持ちは痛いほど理解出来る。嫉妬という物は思った以上に厄介で人や妖怪を狂わせる｣
｢え…【貴方も】ですか…？｣

【貴方も】という言葉がちょっと気になった。
この言葉が出てくるってことはこの頼朝さんも嫉妬によって狂った過去があったのかな…？
しかし、頼朝さんは同情的な表情を一転させて穏やかな笑顔でこう続けた。

｢だが、そなたにはそなたの個性がある。確かに不満はあるかもしれぬが…そこまで悲観する必要は無いと思うぞ｣

それまで下を向いていた人魚は顔を上げて頼朝さんの方を見た。そして､可愛らしい笑顔を浮かべるとぺこりと一礼した。
それを見届けた頼朝さんはまた優しく微笑み、Aちゃんの姿を戻った。
Aちゃんは何が起きたのか分からないみたいで、きょろきょろと当たりを見回している。

｢あの!先程はごめんなさい。私にできる精一杯の償いはさせていただきます…｣
｢そんな…私は何も…できることをやっただけですので！｣

人魚はAちゃんにそっと腕を伸ばす。Aちゃんもそれにつられるように手を伸ばす。
青白い光が出てきて…Aちゃんの手には人魚のアークがあった。

｢くれるの？｣
｢せめてものお詫びという気持ちで…｣
｢ありがとう。大切にしますね！｣

Aちゃんはアークを大切そうに服のポケットにしまった｡
人魚はぺこりと一礼をすると、どこかに行ってしまった。
その後ろ姿をAちゃんは優しく見つめていた。

｢行っちゃったか…｣
｢何はともあれ…お疲れ様でした。お怪我はありませんか？｣
｢は、はい…｣
｢それなら良かったです！｣

唐突に私達に話しかけた白い猫は誰も怪我をしていないことを確認するとほっと息をついた。
あれ、この子笑うとすごく可愛いんじゃ……と思った直後だった。
白い猫は急に女の子の姿に変化すると、Aちゃんの右腕を掴んで笑顔で言った。

｢それじゃあ、私は主について行きますので！帰りますよ、主〜｣
｢｢待って！？｣｣

私達が止めるのも虚しくAちゃんは引きずられるように帰らされてしまった。