〈H×H〉Astrolabe・syndrome

ハニーブロンドは闇に舞う ページ19

『もしもし、イルミさん。制御室に辿り着きました。中央の電源を壊すタイミングを教えてください』

「あ、入れた？スゴイスゴイ。じゃあ五時になった瞬間にミスなく壊して」

この男警備がいるの分かってただろ絶対。

携帯をしまって代わりに昨日準備したナイフを取り出す

部屋の壁の引き出しを漁ると、直ぐにドライバが見つかった

電源装置のネジをドライバーで開けると、同じような保護カバーがまた姿を現す

「パスコード。装置の開放にはパスコードが必要です」

『は？』

電子音の説明に苛立ちながら適当なパスコードを入力する

全く当たらない。後2分前後、しくじったらイルミさんに殺される

どうする、どうしよう。パスコードを設定した人も知らないのに分かるわけがない

保護カバーごと壊すしかないな

携帯を見ると五時まで後5、4、3、2、1

『おぉぉらあっ！』

よいこは絶対に真似しちゃいけないナイフの使い方で保護カバーごと電源を壊す

瞬間、パチッ！と目の前の物でも見えないほどの暗闇に襲われると同時にサイレンが鳴り響いた

『しまった！保護カバーごと壊したから』

聞こえる足音。恐らく警備隊がこの部屋に向かっている

今のこの季節。外が五時でもう既に暗いせいでどこからも明かりがない

足音は途切れることなく近づいている。悪いのは私だし、仕方ないのかもしれない。
だけど、まだ、今ここで倒れるわけにはいかない

ナイフを握った瞬間に、大勢の人が倒れ込む音がして思わず後退する

『……何が起こって、』

息を呑んだ咄嗟、私の頬が誰かの手によって持ち上げられたようだった

「ありがとう、A。助かったよ」

『シャルナークさん！？あれ、名前』

パッと一点明かりが灯って、細い指がチョーカーに触れる

「ふーん、君のことだったんだ。このライターあげるから早く逃げるといいよ」

『え、ちょっと待ってくだ、、』

呼び止める前に視界から薄い金髪が消えて、反射的に一歩踏み出す

数歩歩くと、足の裏に嫌な感覚を覚えた

地面に横たわる人、人。

この部屋の窓から出た方がいいかもしれない

後日お礼をするとしよう。

窓を開けて暗闇の中に飛び込むと、ポケットから振動が伝わった

携帯の着信に出ると、イルミさんが声色の変化もなく告げる

「オッケー、依頼達成。あれ、チョーカー外した？まぁ、いいけど」

なぜバレた。チョーカーというより外したのは鈴だから、音で判断したのだろうか


暗い空を見上げると、ヘリが私の元に迫っていた

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