2 ページ10
「──と言う事があってだね。仕事をしに来たわけだ」
「は、はあ……?」
「そうなん、です、か?」と何やら言いたげな茶色い雛鳥の横を通り過ぎ、白いテーブルへと紙を置く。
「研究所の方にいると、周囲が煩いものでね」
お邪魔させて頂くよ、と言う私に、彼……サンダルフォンと呼ばれる天司は
「じゃあ、珈琲を用意してきます」
と背中を向けて駆けていった。
元気なものだ
「さてと……ん……?」
紙を間近にし、先ほどまでは気付かなかった香りに顔を顰める。
何やら書類がハーブ臭い。
「なんで……あぁ、なるほど……」
だが、理由はすぐに分かった。
パラパラと束を捲ると出てくる出てくる。
紙の一部が変色した書類達が。
「ルシファーめ……」
彼は自分の研究以外には、とことん雑な男だ。
想像するに、採ってきた薬草をそのまま書類の上に置いたのだろう。数日ほど。乾燥させるため。
別にそのまま出してしまっても良いのだが、評議会の人間が厄介だ。
「お待たせしました…!」
戻ってきた雛ちゃんが、珈琲を机上へ置いた。
「雛ちゃん、戻ってきて早々に悪いが、君にお仕事を頼もう」
「!」
「私が普段いる研究施設は分かるかな」
「はい!」
「そこに行って、書類用の紙を貰ってきてほしい。私の部下に『A様のお使いです。書類用の紙をください』と言えば良い」
そこまで言うと、雛ちゃんは「分かりました!すぐに!」と、再び、今度は元気良く駆けていく。
「元気な事だ」
まったく誰に似たんだか。
諸君は分かるかい?私はね、私に似たと思っているよ。
「にしても良い香りだ」
紙から漂うハーブの匂い。
薬草本体からする匂いに顔を顰める事はあるが、彼の手やローブからする匂いは不思議と嫌いではない。
直接的に香っているわけではないのが理由だろうか。
「まぁ良いさ。妻として、完璧な仕事をしてやろうではないか」
そして執務室へ戻ったら、植物を乾燥させる時の注意でもしようかね。
44人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アキ(プロフ) - リクエストに応えていただきありがとうございます!更新されてるのをみてすぐ飛んできました!これからも楽しみにゆっくりと読ませていただきます! (2021年11月25日 6時) (レス) @page20 id: aa044e7ab8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:*Reno | 作成日時:2020年10月5日 5時