黎明の手記 (ページ9)

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香りページ9

｢ふむ｣

白いローブへと顔を埋め、うん、と呟く。

｢君は不思議な香りがするねルシファー。ハーブと言うか何と言うか、冷たい大理石に彫った植物みたいな香りがするよ｣

そう言った私を、何とも言えない表情のまま朝焼け色が見下ろしている。

｢どうして床に転がっているのか気になるのだろうが、心配には及ばない。佇んでいるのが面倒だったのだよ｣

許したまえ。

ローブを投げ上げると、はぁ、と短い溜め息が聞こえて、彼が投げられたそれを掴んだ。

｢貴様があと少し使えない奴だったら、すぐにでもそこの窓から突き落としてやったのに｣

｢安心したまえルシファー、私が使えない奴である事は無い。少なくとも、そこらの研究員よりは有能だと思っている｣

けらけらと笑う私の横を通り過ぎて、ルシファーは机上に置かれていた紙の束を投げ渡す。

｢おっと｣

ばさばさと羽ばたくような音。

投げられた紙の束を見る。

期限が迫っている書類達だった。

｢おっとぉ……？｣

｢有能だと自称するならやっておけ｣

｢なんたること。せっかく君の匂いでリラックスしていたと言うのに｣