黎明の手記 (ページ15)

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｢へぇ、それで俺ができたのかい？｣

限りなく黒に近い髪と、紅い瞳が私を見る。

｢そうだとも。自分で見目を考えただけあって、お前には本当に愛着がある。少なくともルシフェルよりは｣

｢そりゃどうも……はい、紅茶｣

ルシフェル、と言う単語に、我が息子ことベリアルはあからさまに不機嫌になる。

つい最近知ったのだが、彼がこんなに分かりやすく表情に出すのは私の前だけだそう。

｢ありがとう｣

紅茶を受け取り、口を付ける。

カランコロンと氷がぶつかるグラスの中に入れられた、彼の瞳と同じような紅い色。

｢ベリアル、お前は誰か、お気に入りはいないのかい？｣

｢お気に入りか……｣

うーん、あー、んー、特にはいない。

若干考えてから発せられた言葉。

そこには『その言葉に沿うほどの存在か分からない』と言った感情がある。

｢まぁ良いさ。いずれ出来ても出来なくても、お前の好きなように生きれば。ただ狡猾で知性深く、自由に在ればそれで良い｣

｢なぁ、息子に対する母親って、皆あんたみたいな感じなのかい？｣

｢基本的に可愛くはあるだろうが、大人になった息子に『今も最高に可愛い』と言う母親は少ないと思うよ。『昔はあんなに可愛かったのに、すっかり大人になっちゃって！』みたいな感じでは？｣

｢なるほどねぇ｣

変な親持っちゃった、と言いながらソファーに寝転がるベリアル。

こう言う行動の端々が、本当に意味も無く私に似ているんだよ、この子は。