夏だもの ページ1
「Aさま"ァーーーッッッッ!!!!!」
悲鳴だか嗚咽だか分からん声に、ふと顔を上げた。
「なんだい」
「遊びましょう!!!」
外廊下に置かれた白いベンチに座っていた私の目の前に、ズザーッと滑りながらやってくる青年が一人。
遊びましょう!ともう一度叫ぶ青年に「所長の執務室で?」と言えば、半ギレ状態で返される。
「水で!!!研究所の皆で!!!!!」
遊びましょう!!!
* * *
その声を元凶に、今に至る。
「いやぁ、実に元気だな」
「呑気にしている場合か?」
「ははは」
現在、私とルシファーは研究所の西側にある森林付近にいる。
何故だか知らないが、あの後普通に水遊びをしていたはずが、誰かの伝達ミスか何なのか。
『夕方6時までにA様か所長を捕まえた奴は、なんでも好きな物を貰える』
などと言う、子供の鬼ごっこかのような話が広まった。
ただ対象の全てが穢れた大人であるせいで、双方ともに、自分の人生を賭けた本気の鬼ごっこになりつつあるのだが。
何となく誰が流した話なのか、想像出来てしまうのが卑しいね。ベリアル。
「ここの奴等の頭は子供なのか?普通おかしいと思うだろうが。大体、この炎天下の中で…」
流石のルシファーもこの猛暑日にローブは着ていられなかったのか、すっかり脱ぎ去り、地面へと放り投げてしまっている。
雑な男だな、とは思いつつ、私もまぁ似たような状態だ。何か言えたものではない。
「まぁ良いじゃないか。どちらとも捕まらなければ良いのだから」
「それはそうだ」
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アキ(プロフ) - リクエストに応えていただきありがとうございます!更新されてるのをみてすぐ飛んできました!これからも楽しみにゆっくりと読ませていただきます! (2021年11月25日 6時) (レス) @page20 id: aa044e7ab8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:*Reno | 作成日時:2020年10月5日 5時