戦車 ページ10
「…暗殺の間違いでは?」
男の顔を見ると、男は少しだけ驚いたような顔をした。
「バレておりましたか」
「当たり前だ。だがそれは頂けない」
「そこを何とか」
「拒否」
「なぜ……」
この長身の男。
外面こそよろしいが、その実、品性の皮を被った化け物みたいな奴なのだ。
「敵は処分するが良しですよ」
こんな言葉を当然のように吐く時点でお察しだろう。
冗談とか過激派とかではなく、敵は処分するものだと本気で思っているし、己の生に仇なす存在は死んで当然だと本気で言う。
何百年も前、彼が私の下に入ってきた時。
『体力のある研究員を貸せ』と言うルシファーへ紹介したところ、後日『随分とバイオレンスな奴だった』と真顔でお達しが来たのが懐かしい。
「……」
私はこめかみを抑えた。
ただの一端の研究員のくせに、獣や天司の撃滅を容易く行う戦闘力を持っているのが余計に質が悪い。
許可を寄越せと言わんばかりに、私の足元にちょこんと座り込む男。
「駄目だ」
「なぜですか…」
「普通に駄目だろう」
「私なら獣の十匹や百匹など簡単に処分できますよ。敵に成り得る研究員も総まとめで燃やしてきます」
「いや、それが駄目だと言ってるんだ。お前は対星晶獣用の戦車か何かでも目指しているのか?」
「? いいえまったく」
「だろうね」
ちなみに頭の良い諸君なら察していると思うが、言語は通じているが、こちらの言葉はまったく通じていない。
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作者名:*Reno | 作成日時:2020年4月11日 5時