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声帯 ページ5
｢彼は、何も言わなかった｣
間違った言葉は不安を煽ることになる。
だがこれ以上の言葉は無いし、これ以上の情報も与えられていない。私は彼に｢何も知らなくていい｣と言われたのだから。
｢何も知らなくていい…そう言われた。ただ、私や君達に被害は与えないと｣
念を押すかのように告げる。
｢それ以上の事はA様に言うつもりが無い…と言うことですか｣
｢あぁ｣
皆が険しい顔をした。
当たり前である。
ここでは養成、検査、育成、その他あらゆる獣の�犂浜��瓩鯒い気譴討い襦�そんな自分達の知らぬ場所で、まったく見当も付かない何かが起きているのだ。
誰だって、良い顔をする者など居ないだろう。
｢ルシフェルはなんと？｣
｢彼は何も知らない。ルシフェルは嘘が下手だ、すぐに分かる｣
｢ですが疑惑は拭えません｣
その言葉に黙り込む。
確かにその通りだ。
ルシフェルが直接的に関与していなかったとしても知ってる事はあるかもしれない。
例え嘘が下手だとしても、液体とは切り口が無ければ溢れ出さない。
それは言葉でも同じなのだ。
――どうする。
黙り込む私を見つめる、無数の目。
｢A様｣
｢Aさま｣
それは部下達の目だ。
『賢明な判断をしてくれ。私達は貴方だけを信じついていく』
一切逸らされぬ事のない瞳に、私は一つの決断を下した。
｢……命が惜しい者は今すぐ別の棟へ行け。これから先は、君達の命の保障ができない｣
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作者名：＊Reno | 作成日時：2020年4月11日 5時
