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空を切り裂くようなその音は、多分、ルシフェルの放ったパラダイス・ロストの着弾音。
やったか、の声に出す前に、目の前が暗くなり始めた。
口から、腹から血が滴る度に少しずつ、顔が下を向いていく。
「……ルシファ…」
「なんだ」
「君はなぜ……どうして、こんな…」
こんなしょうもない、どうしようもない事を。
そう呟く。
想像以上に自分の声が掠れ、小さく、彼に聞こえたか不安だった。
だが、届いていたらしい。
「あれだけ俺を夫だと言い張って、彼等を息子だ何だと、絶対の、無法たる自由を得たいと喚いていたお前が」
――それを聞くのか。
その最後の声が僅かに震えている気がして、私は顔を上げようとした。
「、シ……」
出血多量。
身体はもう動かない。
「ルシ、ファ」
星の民たる私の命がこのまま終わるかは不明だが、少なくとも今後、彼に会うことは無くなるだろう。
――ならば言ってやらねば。
――記さねば。
私は他者の示す事には心底無責任で無関心だが、己で発した言葉には、重々責任を持っているつもりだからね。
「ねぇ、ルシファ…」
端から分かっていたのか、それとも今さら気付いて言わせまいとしたのか。
ルシファーがそっと私の口を手で覆った。
溢れる血が喉へと落ち込み、気道が塞がらないように。あるいは、私の呼吸を止めてしまわないように、そっと、触れるように。
だから最後の力を振り絞れば、近付いた彼には嫌でも聞こえてしまうだろう。
「ルシファー」
私が引っ掻き、傷付け、刻んで、描いて、踏み固めたこの場所で。
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作者名:*Reno | 作成日時:2020年4月11日 5時