黎明の扉 (ページ25)

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それは〝壁〟に引っ掛かった武器の柄。

｢しま――｣

――った。

最後の言葉を言う前に襲ってくる、頭が割れるのではないかと言う破壊音と、喉を競り上がる鉄の味。

｢うぐ…ぁ…ッ……！！｣

尋常じゃないほどの腹部の痛みに思わず前を向く。

大体の予想はしていたが、腹に突き刺さっていたのはルシファーのぶん投げた槍だ。

背後の壁は崩れていない。
ならば私が槍によって貫かれたまま、壁に僅かに刺さっているような状態だろうか？いっそ瓦礫の下敷きになった方が尊厳が守られる。

とんでもない痛みだと言うのに、ここまで冷静に状況把握のできる自分が怖ろしい。

｢あ゛う……あ…ッ……は…｣

喉の中で絡んだものを吐き出す。

大量の血液と混ざった唾液が口から溢れて、口内が凄まじい鉄の味で満たされた。

一瞬、喀血と表現しかけたが、胃や食道の損傷によるものだからこれは吐血か。

喀血とは肺や気管支から出た血を吐き出す事を指すのだから。

｢う……ぁ…｣

ぽたぽたと言う程度のものではなく、ぱたた、と連続して相当な量の吐血が床へと落ちていく。

口から出るものと、腹に刺さった槍から染み出る二種類の血液に、身体が、貧血症状と言う名の悲鳴をあげ始めた。