硝煙 ページ16
「ルシフェル!…と、その後ろ姿はお母サマ?」
バサバサと分厚い音に、聞き慣れた声。
「「ベリアル」」
「おっと、二人揃って気付いてくれるとは嬉しいよ。どっちもかなり久し振り?…まぁ、そんな事言ってる場合でもないか」
そう言えば久し振りだ、とは、素直に思えないのだが。
お前が私を見張っていた事くらい知っている。
親とはね、子供の嘘を分かった上で騙されてやる生き物なんだよ。知ってるかい?…知らないか。
「来てさっそく悪いがベリアル、ルシフェルと皆を頼んだよ」
「オーケィ、任せてよ。お母サマはアレかい?」
ファーさんのところ?と聞かれる前に、私は「夫婦喧嘩してくるよ」とベリアルの胸部を殴りつけた。
「おっと…」
「では我が息子達、ご機嫌よう。どうかご無事で」
研究所の方へと歩いていく私の背後では、「ハーイご機嫌よう〜」「いってらっしゃい」と言う、あまりにも温度差の酷い挨拶が飛ぶ。
道中、避難する者達に呼び止められながらも、私はゆっくりと歩いていく。
「かなり削れている…か」
損傷が酷いのは島の東側。
戦闘可能な研究員や、彼等が飼い慣らした獣達が向かった場所だ。つまり、私の部下達もそこへ行った。
黒い煙と舞ってる塵(たぶん吹っ飛んだ瓦礫)と、それと炎。
「……」
無理はするなと言った。
彼等は『分かりました』と答えた。
大丈夫、だと思う。少なくとも、あの訳分からん戦車のような奴とか、私が大好きなあの男女とか、直属の者達は。
そう信じたい。
どう、だろうか。
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作者名:*Reno | 作成日時:2020年4月11日 5時