切望 ページ13
だから、すれ違うことさえ無い。
｢私の自由…この願いを叶えてくれるなら、神でも、悪でも、何でも良い。…私はね｣
彼のいる方とは違う。
まっさらに続く道を歩く事が、こんなにも怖ろしいとは思わなかった。
｢きみは違うんだろう？ルシファー｣
黙って私を見続けた目は何かを察したように伏せられ、次の瞬間、再び私の瞳を見つめた。
｢その先にお前の望むものがあるとでも？｣
低い声。
怒っているわけでは決してない、ただの、冷静な議論を求める声。
｢私の望むものが、無いとでも｣
この研究所にはあり得ない、あまりにも静かな時間の狭間で一つ。
確固たる、意思の表明を。
｢私は全ての責任を負う代わりに、万物の答えを提示したいんだ。守護や先導は要らない｣
概念も心も、私だけの世界などつまらない。その世界が欲しいのなら、きっと私は、とうにこの世を滅ぼしているはずだから。
様々なそれらが満ちた世界で尚、自由である事に意味があるのだ。
無法たる自由とは、そう言うものだろう。
｢では、今度こそご機嫌よう｣
理解できないものは敵とする。人の醜い心理だ。
その心を得るも捨てるも自由だし、得た敵意を剥き出しにするのも自由。勿論、向けられた敵意の牙をへし折るのも、どうやってへし折るかも自由である。
｢互いに違ったね。求めた自由の意味が｣
私は、神や世界と言う指標がある上でその倫理を越えたかったし、それを咎める者を一掃する…言わば免罪符が欲しかっただけ。
｢ルシファー、君はどうだ？｣
答えてくれる存在などいないのに、そう問いかけてしまうのは何故だろう。
諸君には、分かるだろうか。
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作者名：＊Reno | 作成日時：2020年4月11日 5時
