黎明の扉 (ページ2)

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崩落* ページ2

彼の肩が揺れた。

それは僅かではなく、完全に、この視界がぐしゃぐしゃになった目でも視認できるほど明確に。

｢…は、……は、っ…｣

肩で息をする私に、きょとんとしたままのルシファー。

この光景を他者が見たらさぞかし滑稽なことだろう。いや、それどころではないか。

｢……まぁいい｣

彼は暫くして、静かにそう言った。

｢お前には話していない。お前が理解できないと言っても仕方ない事だ｣

違う。

｢違う……｣

｢何が違う？｣

違う。

｢違う……！！｣

これ以上は、口に出してはいけない。

そう思った私は、床に落ちて割れたティーカップの、一番大きな破片を彼へとぶん投げた。

これは最早悲しみや怒りではない。

そんな単純な言葉ではない。

｢実家に帰らせて頂く！！｣

ソファーから立ち上がりそのまま扉の方へと歩いていく私を、彼は止めなかった。

｢実家に帰る、と言うのは構わないが、お前が投げた本くらい戻しッ…おい！！A！！｣

歩きながら手に取った分厚い図鑑。

それを彼の腕目掛けてぶん投げ、私はそのまま執務室を出た。