黎明の剣

暗所 ページ6

部屋に戻ると、案の定だがベリアルが居た。

｢オハヨウお母様｣なんてわざとらしい言葉遣いに｢お休み、我が息子よ｣と返し、寝室へと直行する。

半ば蹴り開けるようにドアを開けるとルシファーがインナーを着替えている途中だったが、残念ながら私と彼は、今さら何かを気にするような関係でもない。

｢君とベリアルの言葉に僅かな情報の差があった事に大変私は遺憾を示している。これについて説明を願うぞ｣

｢重要な事は話したはずだが？｣

｢あれ以外は重要ではないと？｣

｢お前が質疑をすれば返した。早々に部屋を出て行ったのはそっちだろう｣

｢否定はしない。だがルシファー、君の言葉はいつでも飛びがちだ。私がいつ如何なる時も飛んだ話の間を埋められるわけではない｣

｢何故俺がお前に配慮せねばならない｣

｢張り倒すぞ｣


――バンッ


弾けるような音と、キィン、と言う金属音。

目の前で鍔迫り合いのように交えられた二つの武器の向こう側で、ルシファーの朝焼け色の瞳が見えた。

｢ほう……寝惚けてはいなかったか。A｣

｢君こそ寝惚けているのでは？目覚めのキスが必要ならしてあげよう｣

そうして暫く武器を交わしていた私達だが、5分ほどしたところでお互いの武器を消滅させるに至った。

5分内にどちらかが折れたら折った方の勝利。

5分で互いに武器を譲らねば一旦保留か引き分け。

5分経ってもどちらかが食って掛かるのならば今度は外で、互いに血を見る事になる。

これが私達のルール。

何百年前からやってるんだ？と思うだろうが、そもそもそんなルールを約束をした記憶は互いに無い。

これは世間的に、暗黙の了解、と言うそうだ。

まぁ、だから何だと言う話なのだが。

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