黎明の剣

成形 ページ36

れろっと舌を出しそう言うと、ルシファーは怪訝な顔をしながら、私の背後で密やかに話している部下たちへと視線を向けた。

｢しょちょう、Aさまのこと、しんぱいしてきたのかな｣

｢しっ！殺されたいのか！？｣

｢お前達、聞こえていると思うよ｣

後ろからはひん…と悲壮感の漂う声がして、正面からは深くも短い溜め息が聞こえる。

｢大事がないならいい｣

｢おや、愛しい妻を心配してくれていると｣

｢ほう…お前の耳は飾りだったか｣

まさか。

そう言いながらルシファーの元へと近付く。

彼は近付く私に合わせるようにして踵を返し、歩き出した。

｢持ち場へ戻りたまえ｣

私は歩きながら振り向き、部下へと告げる。

｢は、はい｣

｢分かりました！｣

元気でよろしい。

途中、追撃のように聞こえた｢え！？妻！？？｣と叫ぶ声には不安しか無かったが、まぁ、今さら別に良いだろう。

｢……｣

｢ルシファー、物凄い表情になっているよ｣

｢誰のせいだと？｣

｢さぁ？君の思考までは分かりかねるな｣

この後、彼の執務室にて書類を見ているところに｢ご結婚おめでとうございます！？？｣と花束を持ってきた部下のせいでルシファーの機嫌が氷点下まで落ちた事については、またいつか、機会があれば話そう。

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