黎明の剣

灰色 ページ25

自室を出て廊下を歩いていれば、まぁー心配性な部下達が駆け寄ってくる。

大丈夫か、具合はどうなんだと、焦燥と不安とが混ざった瞳でしがみついてくるのだから引き剥がすのにも一苦労。

そんなに懐かれるような心当たりは無いが、愛されているならそれに越した事などない。

｢彼等はあんなに子供だっただろうか｣

ルシファーの執務室にてそう言えば、部屋の主は｢さぁ｣と短い返答を寄越してきた。

｢私の不具合が治ればいい｣

｢そうだな｣

｢君に掛かってるんだ｣

｢分かっている｣

｢頼むよ。ルシファー｣

我ながら陰気臭い会話だと思う。

だがどうしてか、ここ最近ずっとそんな感情ばかりが募ってしまって彼と研究職らしい会話が出来ていない。

聞かれたら答えられるのだが、私を気遣いあまり脳へ負担を掛けないようにするためか。

彼は、あまりそう言った話をしてこなくなっていた。

｢……｣

お互いに、黙っている時間が増えた気がする。

こうなる前はお互いが傍にいると分かれば日が暮れるまで話し込んでいたのだが、さて、どうしたものか。

｢ルシファー｣

｢なんだ｣

｢外へ行こう｣

ガタン、と、彼が立つ音がした。

｢あら素直｣と茶化せば｢お前が言ったんだろう｣と呆れがちに返される。

｢それもそうだ。……あぁそうだ、部下達に見付からないように行こう。最近よく泣きつかれる｣

｢行く宛ては？｣

｢立ち入り禁止区域｣

｢…………｣

｢そんな顔をしないでくれよ、ルシファー。まるで私が突拍子もない女のようだろう｣

まぁ、事実だが。

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