P.3 それは、恐怖心。 ページ4
夢を見ていた。
その夢の中で、私は塾に続く見慣れた道を歩いていた。
良く晴れた青空に、車はほとんど通っていなかったことを覚えている。
散歩だったのかそれともどこかへ遊びに行こうとしていたのか。目的は分からなかったが、私は暢気にその道をぶらついていたのだ。
そんな私の耳を、唐突に銃声が貫く。驚いた私はとっさに視線を前に投げた。
そして目に入ったのはすぐ目の前にあった一軒の民家。そこには先程の銃声の正体と思しき半自動小銃を手にした初老の男性がいた。
恰幅のよいその男性は青い色のジャージに身を包み、眼鏡をかけていた。毛髪の乏しい頭部が、その男性が恐らく40はくだらないであろうことを示している。
その男性は私の存在に気付いていたのだろうか、じっとこちらを見つめ―――目が合った。
その瞬間、背筋が凍るような殺気を感じた私はとっさに踵を返し、その場から逃げ出した。
振り返ることもせずに走る。すぐ近くの十字路に差し掛かった時、とっさに曲がり、身を潜めた。
直感が、あの男性が私を追ってきていることを告げる。その直感が間違っていないと告げるかのように、すぐ近くの道を灰色のワゴン車と軽トラックが走っていった。
そのうち前を走っていた灰色のワゴン車にあの男性が乗っているのが見えてしまって、恐怖で体がすくんだ。
あの男性のほかに、ワゴン車を運転していた癖が強い茶髪の、花柄のエプロンを着けていた女性―――男性の奥さんだろうか―――と、ワゴン車を運転していた白いTシャツを着ていた男性が見えたのを覚えている。
荷台の車が通りすぎてすぐに別の道から家に帰ろうとしたものの、どうやって調べたのかその男性が家の前にいた。あの男性がいる様じゃ家にも近づけないと交番へ向かおうとした時、その付近を灰色の車が通っていったのが見えた。
元々他人だったのか別行動で私を探すことにしたのか、軽トラックの姿は見えない。
とにかくどこか安心できる場所にいたいとあの車から見えなくなったのを確認してから、細心の注意を払いつつ近くの公園を通り、どうにか家に辿り着いた。
家の前には祖母と親戚の女性がいた。私はその二人を見た時に解放感からの安堵から、事情を聴いてくる二人に「家の中で、鍵かけて、警察呼んで!!」と泣き叫ぶようにして訴えた。
―――この夢は、そこで終わった。
P.4 それは、ある種の娯楽のような。→←P.2 それは、遊び心。
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作者名：Aster | 作成日時：2019年11月28日 23時
