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短編或る朝の出来事ページ41

3連続短編第2弾

当時10歳のアンジェロが身体測定の日の朝に姉リヴィアに起こされる話
突然始まって突然終わる

因みにリヴィア目線

――――

チュンチュンと小鳥が鳴いている。柔らかな光がそこかしこに踊り、朝が来たことを告げていた。既に食卓にはパンとスープと云ういつも通りの朝食が並んでいる。

だけど肝心の人物の此処にはいない。

「全くいつまで寝てるのよ、あの子は」

はぁ、と溜め息を吐いたあたしはリビングを出てとある部屋のドアを開ける。窓際には戦隊もののフィギュア。こういうのを見るとにぃにを思い出すなぁ。

ちらりとベッドを見れば流れ落ちる紅い髪。ふふ、あたしが云った通りにちゃんと手入れしているみたい。きっとクラスの女の子たちも気に入っているわ。

あたしはベッドに近づき、寝ているアンジェロを揺する。時折、呻き声のような声を漏らしているけど起きる気配はゼロ。

「ちょっとぉ、早く起きなさいよね。今日は身体測定の日でしょ」

ゆさゆさとさっきよりも激しく揺する。その度にアンジェロの髪が揺れる。でも本人は目を覚まさない。いい加減にしないと本当に遅刻するのに……。

一度肩をすくめたあたしは部屋のカーテンを開けて朝日を部屋に取り込んだ。光の筋がアンジェロの顔を照らす。気持ち良さそうに眠るその顔はまるで天使のようね。

でも、是でも起きないとなると"あの手"を使うしかないわね。

あたしはそっと掛布団を引き剥がし、アンジェロの脇腹を擽った。途端に喉で笑い出す弟。あまりにも擽ったいのか、うつぶせになって身を捩っている。

「ほぉら、さっさと起きなさいよ」

こちょこちょと擽るとアンジェロは肩を震わせて必死に耐える。あたしの手から逃げようともがいているけど、そう簡単にはいかない。

ちゃんと起きるまで辞めてやんないだから。

「ね、ねぇね……」

何とか絞り出した声にあたしは手を止めた。やっと起きたみたい。

アンジェロはゆっくりと体を起こし、胡坐をかいてあたしを見つめている。まだ十分に頭が働いていないみたい。

ぼんやりと見ていたかと思えば大きな欠伸を零す。そのままベッド脇の時計に目を遣ったアンジェロが一瞬固まるのをあたしは見逃さなかった。

「さっさと顔洗って来なさい。服はねぇねが用意しておくから」

こくりとアンジェロは小さく頷く。そのまま裸足で駆けていく後ろ姿に本日二度目の溜め息を吐いた。