【資料集】apocalypse...関連 (ページ28)

今日:9 hit、昨日:1 hit、合計:9,803 hit

短編求人広告に惹かれた少年ページ28

ルナ・オーロの町役場。
そこにやって来たのは14歳のアンジェロ。分厚い本を携えて役場に来た彼とジャンとのお話。

ジャン目線で進みます。

―――――――

「にゃんこいる？」

カランと役場の入り口に取り付けた鈴が鳴る。それと同時に聞こえる子供の甲高い声。ふと目をあげれば、町一番の問題児がそこにいた。

学校帰りなのか、鞄と分厚い本を持ってやがる。ありゃ医学書か？問題ばかり起こす癖にそういう所にはしっかりしてるんだよな、あのガキ。

小僧は緩く三つ編みにした髪が靴に着きそうになるのも構わずにしゃがみ込む。

「にゃんこ、元気にしてた？」

膝に医学書を置いて、鞄をまさぐる。小僧は紙に包んだパンを取り出して、一口サイズに千切った。それを目の前の猫に差し出す。

猫は小僧をちらりと見たかと思うとおもむろにパンを食べ始める。俺の手からは食べねぇ癖に小僧のは食うのか。

幸せそうに猫を見る小僧はいつもの悪戯小僧じゃねぇ。あいつこんな顔もするのか。

「これって……」

小僧はゆっくり立ち上がると壁の張り紙を食い入るように見つめる。まるで彫像じゃねぇか。

"フェイトの入隊希望者募る"

その文字と共に募集要項や試験の日付が書かれた張り紙。フェイトの隊員なのか、軍服を纏った男女が勇ましく写っている。

くるりと振り返った小僧は張り紙を指差しながら、口をパクパクさせた。何か言いたいなら言え。

「おじさん、フェイトってにぃにが好きだったあのフェイト？」

「そうだな。まぁ、此処らじゃフェイトに入れた奴はいねぇから目立ってモテるだろうなぁ」

「ホント！？じゃあ俺フェイトに行く！」

目をきらきらさせて医学書を抱きしめる小僧に俺は呆気にとられる。此処からどんだけ離れているのか分かっているのか。

少なくとも馬車で一週間かかる。その間にカルネージでも現れたらとか考えないのか。

……いや、小僧なら考えねぇだろう。自分が何を言っちまったのか、こいつの顔を見れば分かる。

気づかねぇ内に誘っちまっていたらしい。

「ね、おじさん。パンドラ適合試験ってどんなやつ？試験受けた人いる？」

「あぁ。いるにはいる。ちょっと待ってろ」

俺は受付から離れて自分の席に向かう。まさか此処で小僧が食いつくなんて思いもしなかった。

今年は誰も名乗り出てなかったし、小僧を推薦するなんて誰も思いもしないだろう。

俺は溜め息を吐いて資料を手に取った。全く今日ってやつは色々起こりやがる。