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「…海外旅行はともかく、殺せんせー主催の企画が『普通』に収まるわけないよなぁ」
苦笑しながら疲れ切った様子で隣に座り込む悠馬くんの言葉に静かに同意する。
「本当に、規格外の標的だよね、先生は」
けれど、2月の最後、卒業の前に、とっても素敵な経験ができたなと思う。こんなのはもう2度と、絶対にできない経験だと思うから。
たくさん悩んで、ぶつかった1月。受験に、先生に、散々振り回された2月。
1月は去ぬ、2月は逃げる、なんてよく言ったものだな。本当に、あっという間に過ぎてしまった。
中学校からの卒業も、暗殺からの卒業も…もう目の前。
「あのね、悠馬くん」
「ん、どうした？」
下校中、不意に足を止めたAがこっちに体を向けて口を開いた。
口数がそこまで多い方じゃないAが伝えようとしてくれる言葉は、きっと、彼女にとって本当にものすごく大事なものなんだと思う。だから、ってだけの話でもないけど、ちゃんと聞いて、受け止めたくなる。
「無事に4月を迎えて、高校生になったら…今までみたいに毎日学校で、会えなくなるんだよね」
「そうだな」
事実の確認。
それは多分、最近になって俺の中に新しく生まれた不安の原因だ。
「…今のうちに、言っておきたいことがあるの」
1回だけしか言わないからね、とほんの少し笑って、一度口を閉じた。
謎の前置きに首を捻りつつ聞き逃さないようにしっかりと耳を澄ます。言っておきたいことってなんだろう。
「悠馬くんの心がどうなのか、私にはわからないけれど…。私はね、あなたと見る月が、一番綺麗だと思うよ。どこにいても、いつか、あの三日月がいつか形を変えることがあったとしても、私の心は、変わらないからね」
それだけ、と。はにかむように笑って進行方向に向き直る。
俺の不安も全部、見透かされてたのか。Aも同じように不安なのか。どっちだろう…どっちも、かもな。
「Aのそういうとこ、殺したいくらい好きだな」
「…殺害予告？殺さないで欲しいのだけど」
「ははは」
頭に手を乗せながら返したら、耳がぽっと色づく。
もごもごと返答を返してくれた彼女は、相手の言葉に込められた意図を読み取るのもきっと得意だから。少なくとも殺害予告だとは思ってないだろうな。
相手の全部を知りたくなったり、見えないことで不安になったり、自分だけのものでいて欲しいってわがままなことを思ったり。恋って難しいな。
「ありがとな」
「…こちらこそ？」
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nano*(プロフ) - りゅーさん» りゅー様、コメントありがとうございます。楽しんでいただけているようでとっても嬉しいです。毎日更新、とはいかないかもしれませんが、最後までがんばっていきますね！ (2022年5月2日 19時) (
レス) id: da0c6565c0 (このIDを非表示/違反報告)
りゅー - とても面白いです！ 更新頑張ってください！ (2022年5月2日 5時) (レス) id: a57abce8b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：nano* | 作成日時：2022年4月6日 13時
