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渡し方までは詳しく調べなかった、と…そのことを、ひどく後悔することになった。経験したことのないことに備えるのは、本当に難しいことだな…。
他のみんなにそうしたのと同じように、いつもありがとう、とひとこと添えるだけでいいのかな。それとも何か…それが何かはわからないけれど、何かがあるべきなのかな。
彼にだけ…多分、1番、絶対に渡すべき相手にだけ未だにチョコを渡すことができずにいる。
彼の顔を見ていると罪悪感のような何かが湧き上がってくるから、校庭の木の下まで逃げてきてしまった。
これから彼に気持ちを伝えて、その返事を貰おうというわけでもないのに、逃亡なんて情けないな…。
けれど、そうだ。悠馬くんは、私から貰わなくても、チョコレートなんていくらでももらえる…それくらい、たくさんの人から慕われる子だったなと思い出す。
私みたいにおかしな空回りなんてしないバレンタインデーのプロ(それが何なのかは私にもいまいちわからないけれど)の女の子から、気持ちのこもったチョコレートを渡された時…彼は、一体どうするのだろう。
…そんなの、考えるんじゃなかった。
「…靴箱に入れて、帰ろうかな」
巻いたリボンがずれてしまわないように、箱の側面をそっと撫でながら答えを出す。
考えに考えた…出来れば避けたかった最終手段。面と向かって渡すことが難しいなら、置いていくしかない。まだ教室に残っているみたいだから、今日中に、確実に彼の元に届くだろうし。
「俺にはそれ、渡してくれないのかー？」
急に声が聞こえるのは、心臓に悪い。
苦笑いを浮かべた彼がゆっくりとこちらに近づいてくる。
「…」
見栄を…そんなものは最初からなかったから、ちょっと違うかな。見栄を張るとかではなくて、なんというか。無い袖は振れない、と言うやつだ。
「…バレンタインデーのプロには、私はなれないよ」
「なんの話だよ」
少しきょとんとした後、笑われた。こっちの話、とだけ返して、彼の目を…今日初めて、ようやく真っ直ぐに見ることができた。
「隣、座っていいか？」
きちんと確認を取るあたりが彼らしいな。ものすごく。
「…あのね」
「ん？」
なにかを考えていた気がするけれど、私が口を開くときちんと話を聞こうとしてくれるところも。
「バレンタインデーに、誰かにチョコを渡すのは、はじめてなの」
「浅野とかにも渡したことなかったのか？」
「うん」
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nano*(プロフ) - りゅーさん» りゅー様、コメントありがとうございます。楽しんでいただけているようでとっても嬉しいです。毎日更新、とはいかないかもしれませんが、最後までがんばっていきますね！ (2022年5月2日 19時) (
レス) id: da0c6565c0 (このIDを非表示/違反報告)
りゅー - とても面白いです！ 更新頑張ってください！ (2022年5月2日 5時) (レス) id: a57abce8b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：nano* | 作成日時：2022年4月6日 13時
