【暗殺教室】ばびっとらびっと６ (ページ8)

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朝。なんだかそわそわしてしまって目覚まし時計が鳴るよりもずっと早く目が覚めてしまった。…遅いよりはずっといいけれど。

サンドイッチを作って詰めたら、服を着替えて髪を整える。ヘアアレンジをするような技術は無いからせめて丁寧に。
忘れ物がないか確認をしたらテレビをつけて天気予報をみる。雨の予報はないみたい。よかった。

「……」

やっぱり、何度確認しても不安になるな。今日大切なのは、服よりも何よりも、楽しくお魚をみることだと思うのだけれど。やっぱり『デート』という単語がこの緊張の理由だと思う。こんなことなら、イリーナ先生やほかの女の子たち…あとは、前原くんとか？にデートの極意でも聞いておけばよかったかな。
経験したことの無いことに備えるのは難しいものだなと思いながら家を出る。

駅の近くの公園に、約束より少し早い時間に着くことができた。
時計の下に立っている彼の姿を見つける。そこに立っているだけで絵になるというか、まぶしいというか、なんというか…これは決して贔屓目とかではない…はず。
先に着いて待っている予定だったのに、私の方が遅いとは思わなかったな。

「…おはよう。えっと、お待たせしました？」

軽く肩をつついて横から声をかける。ぱっと体をこちらに向けた彼と目が合った。ただそれだけのこと、なのだけれど…なんだか恥ずかしくてしゃがみ込んでしまいたくなる。

「おはよう。なんだ、その…やっぱり、Aは可愛いな」

挨拶の後、柔らかな声で告げられた褒め言葉。…どうしてこの子はこう…すらすらとそんな、恥ずかしいことが言えるのだろう。

「…磯貝くん、早く行きますよ」
「なんで苗字呼びで敬語なんだよ。目も合わなくなっちゃったし」

笑われてしまったけれど…だって、今の状況で目を合わせろ、なんてどんな苦行なの？

「そんな緊張しなくても、いつも通りでいいと思うぞ？」
「…うん」

最近、授業でわからなかったところだとか、クラスのことや、テレビの話、彼のきょうだいの話。そういういつも通りの話題を振ってくれる彼のおかげで、バスに乗るころにはいつもの調子を取り戻すことができていた。

「水族館に行くの、初めてか？」
「うん」

だから、今日が少し怖くて、楽しみだった。

「そっか…なあA、他には？」

笑って頷いた後、他には、と尋ねられた。ほんの少しだけ言葉足らずだけれど、他に行ったことの無い場所、行ってみたい場所はどこか、という質問だと思う。