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校舎の修理が無事終わった。
クラス委員会から戻って来た片岡さんと悠馬くんが持ち帰ってくれた資料の中で、最もみんなの興味を引いたのは…。
「演劇発表会って、なにも2学期末のこの時期にやらなくてもいいのにね」
「しかも例によって、俺等だけ予算は少ないわ、セットとかはE組から運ばなくちゃいけないわ、連絡が回ってくるのは遅いわ…」
突然知らされた演劇発表会の開催。本番は1週間後と目の前で、E組の扱いは相変わらず。今回はお弁当のおまけ扱い。
発表の準備は当然、そんなにすぐにできるものではないし、外部進学を目指す私たちは本校舎の人たちとは違って受験も控えている。悠馬くんの抗議に対して返ってきた台詞を読み上げるように彼が教えてくれた。
「短時間でセリフや段取りをきっちり覚えてこなす訓練。これも椚ヶ丘の教育方針だ。それに君達のことだ、どうせなんとかするんだろ」
私たちならなんとかできる。そう思ってくれているのなら、きちんと応えないといけないね。
「よっしゃ！やるならさっさと役と台本決めて終わらそうぜ！」
浅野くんの言葉に触発されたみたいで、みんなのやる気も充分。あちこちでどんな劇にしようかと話を始める。
「先生、主役やりたい」
監督は三村くんが適任。それじゃあ脚本は…？と考えていた時のことだった。演劇発表会の要項を眺めていたころせんせーが、ぽつりとつぶやいた声にクラスが一瞬静まり返った。
「やれるわけねーだろ国家機密が！」
「そもそも、大の大人が出しゃばって来んじゃねーよ！」
「だ、だって！先生劇の主役とか1度やってみたかったし！皆さんと同じステージに立ちたいし！」
非難が殺到する中、子どもみたいに駄々をこねる先生の願いを、叶えてあげたいと思った時だった。
「いーわよ。書いたげる、殺せんせーを主役にした劇の脚本」
狭間さんの声。普段は特別人前に立とうとしない彼女が、1番に声を上げてくれたことが、なんだか嬉しい。
杉野くんと神崎さんが先生の脇を固め、私も小道具か衣装の仕事を貰おうと、そう思って…。
「そこの姫様は、神崎に声当ててもらうわよ」
「……それは、私に言っているの？」
「当たり前でしょ」
脚本家のご指名なら、受けるほかないとは思うけれど…。その呼び方は勘弁してほしいなと少し。思う。
「E組の美人担当と可愛い担当が夢のタッグだな」
「神崎さんと…神崎さん？」
「…うん」
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作者名：nano* | 作成日時：2022年3月4日 18時
