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今までに先生を殺し損ねてきた殺し屋さんたち。下で客引きをしてくれている矢田さんや倉橋さんにつられてここまで来てくれた人たち…それと、修学旅行の時に渚くんたちの班が巻き込まれた誘拐騒動の実行犯だという不良高校生たち。松方さんと、わかばパークの子どもたちも。
私たちが今日までに結んだ縁も、経験も、すべてが力になっているように感じる。『暗殺と勉強以外の集大成』と先生が言ったのは、こういう意味だったのかな。
アルバイトの経験がクラスの役に立つことがあるとは思わなかったけれど。どんな形であっても、力になることができるのは嬉しいな。
「Aちゃん」
「…あ」
覚えのある声に、ゆっくり振り返る。お客様に対して苦手意識を持つのは褒められたことではないような気がするけれど、少し、対応に困るおじさんだ。ここには助けてくれる店長もいない。思わず少し固まってしまった。
「…いらっしゃいませ。ご注文ですか？」
「久しぶりだね。やめちゃったって聞いてちょっと残念だったんだよ」
注文が決まったらまた、と笑って離れようと思ったのだけれど、言葉を遮られてしまう。
離れようとする度に次の言葉が発せられて離れるタイミングがわからない。どうしていつも、こう、誰かに助けてもらわないと、こんな状況すら解決できないのだろう…。
「こら。お喋りも良いけど、忙しいんだからこっち手伝ってくれよ」
「あ、うん…」
ぽん、と肩に手を乗せて声をかけてくれたのは悠馬くん。
「ってことなんで…すみません。こいつ、返してもらいますね。注文決まったら呼んでください」
人当たりの良い笑みを浮かべて自然にその場を離れさせてくれる。
「…忙しいのに、ごめんなさい。ありがとう」
「いいって。実際はそうでもないしな。あんま気にするなよ。ああいうのは笑ってすぐに離れるんだぞ」
「うん…それ、よく言われた…けれど、それが1番難しいと思うの」
だって、相手には離れさせてくれる気がないんだもの。
海での出来事も然り、こういう時の彼の対応はとってもスマートで、頼もしいなと思う。
「Aはちょっといい子すぎるんだと思うよ。可愛いんだから、ああいうのを上手く躱す術はちゃんと身につけといたほうがいいと思うぞ」
他の人に迷惑をかけないように、上手く対応する術は持っていた方がいいと思うけれど…。微妙に納得しきれない言葉には曖昧に頷いておく。
「うわ…磯貝が仕事中にAを口説いてる」
「…そういうのじゃない！」
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作者名：nano* | 作成日時：2022年3月4日 18時
