【暗殺教室】ばびっとらびっと６ (ページ14)

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私の頭に乗せた手を離して、ジャケットのポケットを探るとスマホを取り出す。よくわからないのだけれど、言われた通りそのままで彼の様子を見守る。

「…？」

小さなカシャっという音。私の思い違いでなければ、それはたぶん…。

「うん」
「…悠馬くん」

なにやら満足気な彼には悪いけれど、写真を撮っていいなんて許可を出した覚えはない。

「写真、撮るならカメラは水槽に向けるのがいいと思う…というか、今撮ったものは消しておいて欲しいのだけれど」
「ん？」
「ん？ではなくて…あの、悠馬くん…？」

なにやら考えながらスマホを見ていた彼に声をかけていたらふと思い立ったようにそこで待っていてくれとだけ言い残して、私を置いてどこかに行ってしまう。少し説明が足りないと思う。

近くにいた優しそうな女の人と何やら少し話して戻って来た。

「…なに？」
「ほら、ちゃんとあっち見てろよ」

やっぱり上機嫌な彼が指さす方には、先ほど話していた女の人…が、何故か彼のスマホを持っている。

「ほら、Aがあっち見るまであの人はずっとあのままだぞ」

それは、脅迫…？なんだか卑怯な言い方だと思うし、私に拒否権は無いの…？これなら水槽も写るだろう、ということかな。確かにそうだけれど、そうではないというか…。
見ず知らずの人を長時間この場に拘束するわけにも、となにやら楽しげにくすくす笑う女の人の方に体を向ける。そんな私に満足したように笑って、彼もカメラに視線を向ける。
楽しかったか？と彼の声が耳に届いた。
…うん。とっても。
彼の声のおかげで自然に笑うことができた…と思う。

今度は置いていかれることなく、手を握られて女の人にお礼を言いに行く。

「ありがとうございました」

お礼を言いながらスマホを受け取った彼がこんなにも嬉しそうなのは、この人のおかげ。私からもお礼を伝えてその場を後にした。

「悪い、写真とか苦手だったか？」

今更だな…。少し遅いと思うのだけれど。

「写真はほんの一瞬の、時間を切り取ることができるでしょう？だから、嫌いではないよ。自分が映るのは少し話が違うけれど…その写真を見ればきっと、今の気持ちや大切な時間を思い返すことができるもの。思い出や、その時の想いを残すのにぴったりだね」
「…Aもこれなら喜ぶかもって思ったんだ。これからも、撮るよ。Aが嫌じゃなければ」

喜ばせたい、という気持ちも…写真を見て、これからのことを考えてくれる彼も。やっぱり素敵だな。