ページ ページ5
〇
『今すぐに、ここで私を殺しなさい』
首を斬られるのはツライだろう。
痛いだろう。
どれだけでも血が流れる出ろう。
きっと、
きっと、
無惨様は怒っている。
目の前の無惨は赤い瞳をさらに揺らめかせた。
張り詰めた宝石のような瞳から、
ぽろぽろ……っと水があふれた。
「……だ。やだ、やですっ。嫌です!」
無惨様が拳を振り上げた。
私は思わず、目をつぶる。
いつもの様に、ひどく殴られると思ったのだ。
肺を潰されるように、
床にたたきつけられたのかと思った。
強く抱きしめられたのだと、
ややあって気づいた。
「姉さまの馬鹿!」
『……無惨』
「貴女のために生きているのにっ、
貴女のために戦おうと思ったのにっ、
どうして……、
どうしてっ、そんなことが出来ましょう!」
ぎゅっと着物の袷を絞るように、
抱きついてくる様子が
あまりにも愛しくて
可愛らしくて。
『ぅ……っう、よかったぁ……っ』
私は涙を流しながら、
その場に座りこんでしまった。
脚が、がくがくと震えている。
啖呵を切ったが、
怖かったに決まっている。
「姉さま……」
『無惨っ、無惨』
私は馬鹿みたいに弟に縋りついてしまった。
『殺さないでくれる?一緒にいてくれる?』
「姉さま、姉さまが妹みたいですよ」
『な……いいんだ。ねえ、一緒に戦ってもいい?』
私がそう聞くと、
途端に、弟は苦虫を噛んだような顔をした。
そして
「そろそろ行かなければ」 と言って
部屋を出ていった。
『……つまり、良くも悪くもないってことか』
一人暗い部屋に取り残された私は、
絵筆を握り締めて
哂った。
〇
Episode,14 鬼ごっこ→←Episode,13 喧騒
190人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
三千幸 - 雨雲さん» うへぇ、そんなに言ってもらえるとは光栄です……( 三甘*´艸`) (2019年12月9日 19時) (レス) id: d839c37112 (このIDを非表示/違反報告)
雨雲(プロフ) - マジで最高なんですけど、、え、マジで(語彙力) (2019年12月8日 22時) (レス) id: 75cba6923f (このIDを非表示/違反報告)
三千幸 - 蓮さん» アリガトウゴザイマス―――! (2019年12月3日 19時) (レス) id: d839c37112 (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - 面白いいいいいいいいいいいいいいい! (2019年12月3日 19時) (レス) id: 947501fbf1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:三千幸 | 作成日時:2019年12月2日 21時