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 思いっきり腕を横にスライドさせ、視界の端に入った炭治郎を避けるために腕を引いて脇を閉めた。体を斜めに跳ねさせる。ブーツの底が床を蹴り、石を抉るように私の身体が遠くへ投げだされた。

「君、大丈夫かっ!……って、格子が斬られている……?」
『痛って……ああー、肩打った』

 撃ちまくった腰や肩をさすりながら、立ち上がる。顔を上げれば、炭治郎が変な顔でこちらを見ていた。
 頬のところどころに泥がついていて、どこまで探しに行ったんだと思う。

「お前……助けたのか、この子を」

 信じられない、と呟きながらそう言った彼に私は答えた。

『てて……あ?うん』
「どうして……どうして、人間を助けてくれたんだ」

 私は檻の中から出ようとしていた巳一郎君に手を伸ばし、出るのを手伝ってあげた。出てこられた巳一郎君は炭治郎へ面倒を見てもらう。
 巳一郎君は私のほうを気にするように窺っていたが、私が大丈夫だよというと炭治郎君の手を握った。

『我慢ならなかったんです。鬼がやったことでもないのに鬼のせいにされて……。政府非公認の組織とはいえ、鬼狩りにまで出られてはたまったものではない』
「……悪かった。すまない」

 私が口を閉じると、炭治郎は静かに頭を下げた。もう刀の柄に手はかけていない。

『炭治郎は優しい子だね』
「……お前は、否。鬼舞辻Aさんも優しいですね」

 炭治郎に少し泣きそうな顔で言われ、私は即座にそれを否定した。そんなわけない。鬼舞辻無惨の株を上げるため、最近は鬼舞辻無惨をあわよくば生かそうと画策しているのだ。使えるものはなんだって使う覚悟だ。

「え?」
『……炭治郎君は馬や牛、魚を食べますか?』

 話の話題をすり替える。
 私の質問に応える前に、誰かの足音が聞こえてきた。私と炭治郎は視線をかわして、炭治郎は刀に手を、私は筆を構えた。

「……新しい子が来たってきいたんだけどぉー」

 暗闇から少しずつ這い出るように姿が見える。
 ポンポンがついた靴に、大きなストライプのズボン……。私は道化師みたいだなと思った。

「檻から出ちゃった悪い子は誰かなぁー?」

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まゆゆ(プロフ) - 無惨のテンション高めな感じの時は仮面ライダー電王のモモタロスを想像してしまうw (4時間前) (レス) @page12 id: d6c6f36b97 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - 三千幸さん» 見てきます!陰キャ組とか無常とかいいですよね… (2019年11月21日 19時) (レス) id: 94aa0ed7fc (このIDを非表示/違反報告)
三千幸 - ソフィアさん» はい!今、同名で2作品 書いて投稿しています。リッパー落ちとヤンデレ短編集ですが宜しければ読んでください!陰キャ組、白黒無常、写真家が好きなんです!……端末を持っていないのでゲームはやったことないんですが。 (2019年11月20日 19時) (レス) id: d839c37112 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - 第五人格知ってるんですか?! (2019年11月19日 22時) (レス) id: 94aa0ed7fc (このIDを非表示/違反報告)
三千幸 - ミサモさん» そうですよねぇ。(*´▽`*) (2019年11月18日 19時) (レス) id: d839c37112 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:三千幸 | 作成日時:2019年11月5日 20時

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