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「忘れない」





 自然と視線が合わさり、ヴィクトルの指がAの唇に触れる。ふにふにと唇に触れるとそのまま顔を近づけ、Aに口付けをしようと後頭部に手を回したとき、自分の唇に白く細い指が触れた。






「____ファーストキス、絶対にあげません」

「・・・・・そこはキスを受け入れてくれるところだよ。A」

「いや、ありえないでしょ、付き合ってもない人間とキスするなんて」




 それより早く勇利くんのとこに行ってあげてくださいとAは言って部屋を出ていった。
勇利とヴィクトルは海でひとつ和解できたようだ。仲良く帰ってきたふたりを見つけ、Aは小さく微笑んだ。




 翌日、勇利はヴィクトルにジャンプをすべて習っていた。その間もAは
じっとその練習風景を見た。



「ヴィクトル!!今のとこもう一回お願いします!!」



 かれこれ数十回はヴィクトルを飛ばせている勇利、よく世界王者をここまでこき使えるなあとAは思いつつ息切れをしているヴィクトルを視界に入れた。ヴィクトルが前に屈んだ瞬間、Aと勇利が起こした行動はただ一つ、


 ぽすんっ





「____そんなに危険か?」





 ヴィクトルの頭部のちょうどつむじの辺りを指で押したのだ。氷の上にふにゃりと倒れこむヴィクトルとそれをやめるように土下座する勇利、それを見て笑うA。一言で言ってカオス、である。



「なんだよ、あいつら仲いいじゃねえか」

「Aちゃんも楽しそう」



 練習が終わり、帰宅するとひとまず自分のイラスト関連の仕事を終わらせAは先に温泉に入り部屋でパソコンなどを片付けながら明日勇利に何を教えようかと思案をしているとき、思いっきり麩が開きパソコンを持った勇利が突如入ってきたのだった。





「え?・・・・勇利くん?」

「Aちゃん!!聴いて!!曲ができたんだ!!」

「・・・・!」



 イヤフォンを耳に差し、耳を澄ませる。




「_____、いいね」

「うん!!」

「・・・・じゃあ少し音源借りていいですか?振り付け考えちゃいますね」

「!!いいの?!」

「もちろんですよ」

「!!ありがとう!!Aちゃん!」




 ガバリと勇利がAに抱きついた。そしてその勢いのまま畳の上に倒れAは後頭部を畳にぶつけた。




「いった〜〜〜〜」

「ご・・・・ごめん!!大丈夫?!!」

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作者名:あさぽん | 作成日時:2016年11月10日 22時

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