【ユーリ!!!on ICE】Dear Snow (ページ25)

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ヴィクトルはまず最初にアガペーを踊る。繊細なしなやかな動きから始まる。彼の演技が始まった瞬間、息を飲んだ。あぁ、だからなのか彼のスケートに惹きつけられるのは。

「＿＿＿さすが、レジェンド」

「＿＿＿＿」

　次に踊るのはエロス。それはもう情熱的灼熱・・・・いやとにかく大人の色気が溢れ出しているのだ。見ているこっちまでそういう気分にさせられる。途中で見に来た優子が真っ赤な鼻血を吹き出してぶっ倒れているのだから。勇利は勇利で表情がコロコロとせわしなく変わっている。粗方、自分がこの構成をやることができるのかと思っているのだろう。

「じゃぁこれをA、やってみようか!」

「え？」

「できるよね？A」

「・・・・・う・・・うぃっす・・・・・」

　有無を言わせない笑顔でそう言われてしまえば頷くことしかできまい。ヴィクトルの言葉にユーリが声を荒らげた。

「はぁ？こいつが滑れるわけねえだろ」

　鼻で笑うユーリ。それを見た勇利はふと何かを感じ取った。自分の隣にいたおとなしく寡黙な彼女が、普段無表情であまり表情の変化が少ない彼女が・・・・・彼女の目が据わっている。そう、目が据わっているのだ。

「Aちゃん？」

「さっきから聞いてりゃよお・・・・・お前のその態度何？」

　Aはそう言うと腕を組み、一歩、一歩と彼に迫る。

「昨日もそうだよね？年上に対する態度がなってないんじゃないかな？君、年下でしょ？」

「はぁ？」

「目上の人には敬語を使うってこと習わなかった？それにさぁ、君、教えろ教えろって言うけど・・・・てめえ何様のつもりだよ。横暴な独裁者気取ってんなら一生トップにはなれないよ？それに、少しは己の言動というものに責任を持つべきだよ？あ、これ説教とかじゃなくてアドバイスだから。先輩からのね？」

　目が笑っていない。そんな彼女にユーリも一歩一歩と下がっていく。

「自分の立場をよ～く考えな？そのちっさな脳で」

　Aはそう言うとひらりと身を翻しリンクの方へ足を向けた。

「よく見ておきな。坊主」

　ヴィクトルの横を通り過ぎる。ヴィクトルはすれ違った瞬間彼女の表情に目を見開いた。

「!!＿＿＿＿(これはすごい)」

　彼女は自分のスタート位置に立つとポーズを決める。

＿＿＿＿＿さぁ、始めよう

＿＿＿＿私の無償の愛を受け止めて？